「よそもの」であるが故に気づくこと。NYで活躍する漫画家が表現する、''枠からはみ出た''物語
── まず、NY Timesにこの小学校時代の経験を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか? NY Timesの編集者の方から何か描いてみませんか、と連絡をもらったとき、まず思いついたのが小学生時代のこの思い出でした。あのとき言葉にできなかった想いを、いつかちゃんと人に伝えられるようになりたい、でもいまだにどう表現したらいいのかわからない、という葛藤がずっとあって、自分の体験を語ることを避けてきたように思います。 でも突然、「それ、一緒にやってみましょう」といってくれる力強い味方が現れたような気がして、挑戦してみようと思いました。 ── Student Opinionに寄せられたコメントは、国籍、人種、ジェンダーなどに関する苦悩や、学校や家庭で感じている孤独感など、さまざまな体験談がありました。ハラさんのコミックを読んで、「帰属意識は他人が自分をどう扱うかということだけではなく、自分自身が内面でどう感じているかが大切だと学んだ」、「なぜいまだに、社会は私たちが一つのアイデンティティを持つべきだとしているの?」と言った感想もありました。ハラさんの体験が、時代を超えてさまざまな背景を持つ子どもたちに反響を得たのは、なぜだと思いますか? 掲載直後はいままでになかったほど、たくさんメールもいただきました。いろいろな世代の読者の方から共感するコメントをいただけたのは、私の経験が決して特殊なものではないからだと思います。 人間のグローバルな移動が増えればひとつの文化・土地に根ざしたアイデンティティでは間に合わない人が当然増えてくる。でも社会の常識やルールといわれるものは同じスピードでは変化しないから、疎外感や違和感を覚える人も増える。ジェンダーや家庭環境などで周りとの違和感を感じている人も、状況は違っても核となるところは同じで、既存の選択肢の中からアイデンティティを選んで自分に当てはめるよりも自分で新たに見つける、あるいは創造する、という方がしっくりくる、ということがある。 このコミックがそういう人たちが声を上げたり誰かと対話したりするきっかけになったのなら、とても嬉しいです。