【毎日書評】借りるだけじゃない得する図書館の使い方教えます!
図書館で働いている私が言うのもなんですが、図書館はあまり人気がありません。地域によっては街の公共図書館を訪れる人は年々減っており、本を借りる量も少なくなっています。 私が仕事をしている大学図書館も似たようなものです。これまで4つの大学を渡り歩いてきましたが、唯一図書館が注目を浴びるのは、高校生が見学に来るオープンキャンパスのときぐらいです。(「はじめに」より) 『読書が苦手だった司書が教える 世界一かんたんな図書館の使い方』(つのだ由美こ 著、秀和システム)の著者は、図書館の現状をこのように指摘しています。 たしかにそうかもしれません。しかし、だから図書館に魅力がないということではないはず。それどころか実際に足を運んでみれば、多くの図書館が(予算など)条件が限られるなか、最大限の努力をしていることがわかります。 そしてその結果、とても魅力的な場所になっている図書館も少なくはないのです。いいかえれば、図書館の人気がないのは、その魅力を知らない人が多いだけにすぎないとも解釈できるわけです。 だからと言って「毎日図書館に行きましょう!」「本を毎日たくさん読みましょう!」なんて、堅苦しいことは言わないので安心してください。 私は司書なのに本を読むのが大の苦手です。だから同じような悩みを持つ人、図書館に行かない人の気持ちはよくわかります。 「いざというとき、必要な分だけ」図書館は使えれば十分です。 この本を読むだけで、図書館の使い方がわかります。(「はじめに」より) 第5章「図書館を使いこなしてネット時代を生き抜く」のなかから、「図書館で集中力・創造性・記憶力を上げる」という項目に焦点を当ててみましょう。
立ち読みで集中力を上げる
「スマホやパソコンで情報は簡単に手に入るのだから、わざわざ図書館へ行くなんて時間のムダ」 そう感じている方もいらっしゃるでしょうし、たしかにそれも間違いではないのかもしれません。しかしその一方、図書館は集中力や創造性を高めるには最適な場所でもあります。 ベストセラー『スマホ脳』(新潮新書)の著者で、精神科医のアンデシュ・ハンセンは『運動脳』(サンマーク出版)という本の中で、集中力や記憶力、読解力、創造性、ストレスの抵抗力を高めるには「身体を動かすこと」だと言っています。 具体的には立つ、歩く、移動する。じつは図書館に行くだけで、同時のこの3つの方法ができてしまいます。(189~190ページより) じっくりと本を読むのは苦手なのに、立ち読みだとなぜか集中して読めてしまう──。そう感じたことはないでしょうか? それは偶然ではなく、勉強や仕事は、立って行うと脳が効率的に働くということがわかっているのだそうです。 ある研究チームが、子どもの読解力や問題を解決する力について、学力調査をおこないました。教室で立ち机を使い、子どもたちにも立って授業を受けさせたのです。 立ち机を導入する前と後で、脳にどんな変化があったのか比べてみると、前頭葉が活性化していました。そのため、集中力と記憶力が高まったのです。さらに学力テストの点も上がりました。(190ページより) したがって図書館で本を選ぶときも、まずは立ち読みがおすすめ。目次や著者プロフィール、まえがきの数ページを立ったまま読んでみればいいのです。そうすれば、それが自分にとって必要な本なのかがその場で判断できるはず。 座って読むのと立って読むのとでは集中力が断然違うと、著者も経験的に感じているようです。そればかりか読むスピードもいつもより速く、欲しかった情報にもすぐ目を向けることができるのだとか。書店よりも図書館のほうが立ち読みはしやすいので、より効果があると考えることもできそうです。(189ページより)