シリアで拘束の安田純平さん控訴審が結審 「今も自由を奪われたまま」
シリアの武装組織に3年4カ月も拘束されたフリージャーナリストの安田純平さんと、安田さんへの旅券(パスポート)発給を拒む日本政府の双方が東京高裁(三角比呂裁判長)に控訴した控訴審は、10月1日の第2回口頭弁論で結審し、来年1月30日に判決が言い渡されることになった。 安田さんのパスポート発給をめぐる簡略した経緯は、下の年表をご覧いただきたい。2019年1月に安田さんがパスポート発給を申請した際には、ひとときの休息を求めて家族と海外で過ごそうと計画し、旅行先はヨーロッパやカナダ、インドだった。紛争地へ行く予定はまったくなかった。 しかし、日本政府つまり外務省は、安田さんがトルコから5年間の入国禁止処分を受けていることを理由に、パスポートの発給拒否処分を通知した。トルコなど渡航先を制約したうえでのパスポートの発給も可能だったが、それもしなかったのである。 安田さんは第1回の口頭弁論で裁判官たちに「2018年10月に帰国した私は、自由の価値をかみしめながら、新たな人生を生きていこうと決意しました。しかし、日本政府はそれを許しません。拘束から解放されて5年8カ月が過ぎましたが、私はいまだに自由を奪われたままです」と訴え、理解を求めた。
外務大臣の濫用で違法
今年1月の東京地裁での判決は、安田さん側のすべての主張は認めなかったが、パスポートの発給拒否処分については「外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したものとして違法である」「本件旅券発給拒否処分は、憲法22条等に違反するか否かについて検討するまでもなく、取り消されるべきである」との判断を下した。その一方で、トルコとトルコに地理的に近接する国への渡航を制限することは認めている。 控訴審で、外務省側は安田さんが旅券法13条1項1号(左下参照)に該当する人物であることを強調し、パスポート発給は「国際的な法秩序および治安の維持を害するおそれがあるばかりか、(中略)国際社会におけるわが国の信頼が損なわれ、ひいてはわが国の国益等にも重大な影響を及ぼすおそれがある」と主張している。 これに対し、安田さん側は「全世界への海外渡航の禁止ができる旅券法13条1項1号が時代遅れであり、国際常識に反し、それを支える立法事実がなくなっており、違憲である」ことを認めるよう、裁判所に求めた。 ジャーナリストへのパスポート発給拒否をめぐる問題では、常岡浩介さんがやはり東京高裁での控訴審で国と闘っており、安田さんと同じ来年1月30日に判決が言い渡される。
佐藤和雄・ジャーナリスト