立花孝志氏が元県民局長の「公用パソコンデータ」を公開 「悪名は無名に勝る」戦略の源流
元NHK職員の立花は、NHKの受信料不払いやスクランブル放送化などを掲げ、2013年に「NHK受信料不払い党」を設立し、「NHKから国民を守る党」に改名後2019年の参院選で初当選を果たす(のちに辞職)。その後、党名を「古い政党から国民を守る党」「NHK党」など次々と変え、ガーシーの除名前後から、「政治家女子48党」を名乗っていた。 その後、お家騒動が勃発するのだが、ここでは詳細には踏み込まない。私が取材した2023年3月時点で同党の参院議員は東谷を含めた2名、地方自治体に20人の議員を送りこんでいたことは明記しておきたい。 「NHKをぶっ壊す」を公言する立花の言動は幾度となく物議を醸している。同年3月23日には、NHK契約者の情報を不正に取得しネット上に拡散させると脅し、NHKの業務を妨害したとして懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決が確定している。 その立花は、参院議員会館の「ガーシー」の名前で割り当てられていた304号室で取材に応じた。彼は主が帰国しないことをいいことに、議員会館の一室をさも当然のように堂々と利用していた。スマホを片手にこちらにも聞こえるような大きな声で取材や選挙関連の対応にあたっていた。「失礼します」と私がドアを開けると電話をしたまま手で手前のソファーに座るよう促すのだった。部屋一面に貼られていたのは、統一地方選で党から立候補を予定していた女性たちの写真とプロフィールだ。とにかく関心を集めることから始まるというのが彼らの選挙戦略で、その禍々(まがまが)しさを凝縮したような空間が広がっていた。 電話を終えると「ガーシーの件やったね」と言って、そのまま対面するソファーに座ると開口一番、「この間、どれだけ政女党の名前がニュースになったか。宣伝効果は計り知れないものがある。これも全部ガーシーのおかげやね」と、満面の笑みで語り始めた。 立花と東谷を結びつけたのは、政治的な思想や理念、政策などではなく金だ。 2022年2月以降、スキャンダル暴露によって爆発的に「ガーシーch」の登録者数を増やす東谷に対し、立花はツイッターのDMを使ってコンタクトを取った。理由は極めてシンプルで、そのとき一番伸びているユーチューバーだったからだ。それまで「著名人」「有名人」というのは、ほぼイコールでマスメディアでの露出が高い人を指していた。しかし、その定義は変わってきた。いまや誰もが知っているわけではないが、YouTubeの登録者数が多いというのはそれだけでコアなファンを抱えた「著名人」だ。マスメディアがまだ気づいていなかった「著名人」の変化を的確に捉えていた、立花の嗅覚には確かに鋭いものがあった。