本好きが作る、街と人をつなげるフリーペーパー「ほんとこ」 土浦
茨城県土浦市内の喫茶店など個人店を取材し、お店にまつわるひと物語をつづるフリーペーパー「本と珈琲と土浦」(通称『ほんとこ』、A5判 4ページ)が昨年から、半年に1回発行されている。作るのは、職業、年代もさまざまな、「本と珈琲と土浦が好き」だという思いでつながる市民たち。広がる人の輪で、土浦の隠れた魅力を軽やかに掘り起こす。 「『ほんとこ見たよ』というお客さんがお店に来てくれたと聞いて、私もつなげられたんだなと思って本当にうれしかった」と声を弾ませるのは、記事を書いた大学生の田畑千芙実さん(20)。土浦市桜町の喫茶店「カフェ デ ポロン」の店主・林盛健さんをインタビューした。学校以外で人に見せる文章を書くのは初めてだったと言い、「人と話すのはあまり得意じゃないがマスターの話を聞くのは楽しかった」と振り返る。
参加者は学生、主婦、会社員にユーチューバー
「ほんとこ」は、同市中央の古民家を改築したカフェ、城藤茶店で毎月1回開かれる読書会に集まる本好きが作る。読書会の後、各々が気になる話題を持ちより編集会議が開かれる。参加するのは10代から50~60代までの男女15人ほど。学生、主婦、会社員、ユーチューバーなど背景や職業もさまざまだ。土浦出身者もいるし、近年土浦に越してきた人からは「土浦に関わってみたかった」「地元の方と知り合う機会になっている」などの声が聞こえてくる。 「読書会」では、最近読んだお薦めの本をそれぞれが持ち寄り、その本の魅力を一人一人語っていく。小説、漫画、ノンフィクション、ファッション雑誌など決まりはない。市内在住の増山創太さん(25)は5回目の参加になる。「僕は音楽が好きなので、本もいつも音楽関係だが、ここでは自分が普段読まない本に出合うことができる」と魅力を語る。 読書会の盛り上がりをそのまま引き継ぎ編集会議が始まる。先日は、市内で40年以上、子供文庫を続ける同市中央の「奥井薬局」をメンバー7人で取材した。今年3月には、会議での書物談義がきっかけになり亀城公園隣の商業施設・公園ビルで2日間の古本市開催につながった。 もともと本が好きで書店員をしていたという田中優衣さん(25)は、4カ月前に兵庫から土浦に越してきた。「ひょんなことで全然知らない土浦に越してきた。知り合いもいなくて寂しかったけれど、本でつながる『ほんとこ』のメンバーを通じて土浦を知ることができている。私にとって土浦が居場所になりつつある」と話す。