「SDGs17項目すべてを達成する街」を作るデンマークの不動産企業に迫る
デンマークの不動産開発企業「エヌレップ(NREP)」は、SDGsの17項目すべてを達成する都市コミュニティの創出など実験的な取り組みを続けています。 エヌレップは人間と環境のための不動産開発をミッションに掲げていますが、同時にサステナブルな都市開発が商機になることも見越して動いています。彼らは「サーキュラー化・ウェルビーイング・経済合理性」の3つをどのように追求しているのでしょうか? エヌレップ(NREP) 本社所在地:デンマーク 創立:2005年 事業内容:不動産関連業
建設業界のサーキュラー化が遅れている
エヌレップは住宅施設や介護施設などの開発を手がけるディベロッパーで、2025年までにカーボン・ニュートラルを達成するという野心的な目標を掲げています。 彼らは人々の生活を豊かにするために既存の建築物を改善するというミッションに向けて取り組んでいます。たとえば、エヌレップが手がける「レイルウェイ・プロジェクト」や「UN17ビレッジ」では環境・社会・経済の三面を成り立たせる都市デザインが実装されています。 私の調査によれば、東京の大手町にある商業ビルの平均賃貸年数は5年ほどです。賃貸契約が終わったあとには内装もすべて現状復帰するため、その際に大きな環境負荷がかかってしまいます。多大な廃棄物やCO2を生み出す建設業界のサーキュラー化は急務なのです。 特に日本ではサーキュラー・オフィスに対しての意識が希薄で、スクラップ・アンド・ビルドで古いビルを取り壊し、新しく建て直すのが一般的です。世界を見渡すと、キノコの菌糸を用いた壁紙やリサイクル可能な天井紙やカーペットなど、サステナブルな建材を開発しているメーカーは多くあります。 日本ではそのような資材を納入するサプライヤー、ディベロッパー、そして解体する業者たちが連携してサーキュラー化を進める動きがあまり見られず、廃棄物を集めてアップサイクルできる環境になっていません。これは世界的に見ると非常に遅れています。 しかし、逆に言えばここにビジネスチャンスがあります。いま、投資家の資金はサーキュラー・オフィスに流れています。環境負荷の低いビルにはサステナビリティ認証が付与され、不動産価値が上昇していくと予想されるためです。 外資系の企業はSDGs実現に向けての努力義務を自らに課していますが、日本では自社ビルでこのような目標を達成してくれるディベロッパーがほぼいないため、サーキュラー・オフィスには強いニーズがあるのです。