「SDGs17項目すべてを達成する街」を作るデンマークの不動産企業に迫る
SDGs目標をどう不動産開発に落とし込むのか
今回の欧州視察では、エヌレップが開発を手がけているコペンハーゲンの「レイルウェイ地区」を訪れました。エヌレップは数社と共同で国営の鉄道会社が所有していた広大な土地を購入し、緑豊かなエリアへとリノベーションしています。 2つの大きな公園と3つのサッカー場を備えた同区域内では部分的に車両通行が制限されており、誰もが自然を間近で感じられるように設計されています。 建物にはエネルギー効率の高い資材が採用され、室内環境や音響、採光にも配慮されています。また、廃水や食品廃棄物を区域内で処理することでサーキュラー化も図っています。 同じくコペンハーゲンでのプロジェクトである「UN17ビレッジ」は、SDGs全17項目の達成を目指す野心的な取り組みです。 約3万5000平方メートルの敷地では500戸以上の賃貸住宅が建設され、CO2排出を30%削減したセメントや木材を構造材として使用しています。さらに、共用スペースやコミュニティ施設を充実させ、住民間の交流や持続可能なライフスタイルの促進を図っています。 住民の多様なライフスタイルに対応するため、UN17ビレッジでは5つの異なる居住ブロックが設けられています。各ブロックは、若い専門職、家族、高齢者など、さまざまな居住者層に合わせてデザインされています。 デンマークでは飢餓に苦しむ人の割合は少ないものの、低栄養価のものにしかアクセスできない人が多くいますが、エヌレップはこの問題を自社が解決すべきものとして捉えています。区域内の住居の家賃は可能な限り引き下げられるほか、誰もが手頃な価格で食事できるレストランも建設する予定です。 これらのプロジェクトに共通する理念は、「人と環境にやさしい住環境を提供し、建設業界全体に持続可能な未来を広げること」です。 建物は一度建てたら、長い間残り続けます。数十年後の人口動態がどう変わっていくのかを緻密に計算しながら、都市設計をしている点も革新的だと感じました。