ジープ「ラングラー」の廉価グレードが復活! 選んで大丈夫? 試乗で確認
屋根と後席後部の車体上部は、先にも述べたように樹脂製であり、一般的な乗用車やSUVのように遮音措置がないため、外の音が室内に届きやすい。なので前後の席で会話する場合は、少し声を高めなければ聞き取りにくい。とはいえ、オープンカーに乗っていると思えば違和感はない。屋根を付けたままオープン気分を味わえるともいえそうだ。 アンリミテッドスポーツは、悪路走行を優先したトレッドブロックの大きなタイヤを装着しているが、それでもタイヤ騒音に悩まされることはなかった。いろいろな音が耳に届くものの、うるさくてイライラするほどではないので、長く乗っても苦痛にはならないだろう。
■エントリーグレードを選ぶ意義とは? 一般道はもちろん、高速道路も安定して走った。乗り心地もしっかりとしていて、悪くない。路面の影響でやや車体が揺れるが、不安にさせるような動きではない。逆に、それくらい動いた方が、悪路でタイヤが沈み込んだり持ち上げられたりしたときもきちんと接地し、確実に前進できるサスペンションになっていることが感じられる。ラングラーらしさだと思えば味になる。 悪路走行を優先した4輪駆動車の面白みは、日々の暮らしで舗装路を走っているときでも、サスペンションの動きなどで悪路走破性が体感できることだ。もし、高速道路を微動だにせず走りたいのであれば、他のSUVを選べばよい。アンリミテッドスポーツは、ジープのラングラーを「あえて選ぶ」意味を実感させる、素のすぐれた性能に満ちていた。 より上級の「アンリミテッドサハラ」(Unlimited Sahara)グレードや最上級の「アンリミテッドルビコン」(Unlimited Rubicon)には、革巻きのシフトノブや合成皮革のシート(サハラ)、ナッパレザーシート(ルビコン)、前席パワーシート(サハラ/ルビコン)、給油口の蓋(サハラ/ルビコン)といった追加の装備がある。 では、装備面で劣るアンリミテッドスポーツは、安さだけが取り柄のモデルなのかというと、そうではない。例えば給油口がむき出しの素朴な姿も、機能性を優先してきたジープの伝統的な哲学が感じられる部分だと思えば、魅力的に見えてくる。 アンリミテッドスポーツはジープの基本的な魅力が味わえる合理的な選択肢だ。
■ 御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。
御堀直嗣