「楽天前監督」今江敏晃氏が明かす、田中将大、藤井聖、鈴木翔天ら選手との《胸アツ秘話》
今江氏がもっとも力を込めた言葉
監督の任を解かれた今江氏は、初めて野球から離れたオフを過ごしたという。 「最初の1日か2日かはいろいろな思いがあって、あのときこうやっておけばよかったのかなとか、様々なことを考えました。でも、そのあとはゆっくり過ごしました。 息子も高校まで野球をやって忙しくしていたので、すれ違いが多かったのですが、大学生になって家にいることも増えたので、家族と過ごす時間も取れました。大人になってから初めてゆっくりした気がします。 それに高校を卒業してプロ入りしてからオフといっても翌年のシーズンのことを見据えて、ずっと動いたり、考えたりしてきたのですが、初めてどの球団にも所属していない立場になったので、1度、頭をクリアにしようと思いました。だから日本シリーズも、メジャーのプレーオフも見ませんでした。見れば自分の観点でこうだな、ああだなと考えてしまうので。 でも、今振り返ると、それだけではなく野球自体を見たくないという気持ちも少しはあったのかもしれません。野球がやっていても違う娯楽番組にチャンネルを変えていましたから」 一方で、消せない心残りがある。 「シーズンが終了してからこういう形でやめることになったので、その後、球場に行く機会がなくなりました。監督室の荷物を整理しに行ったくらい。だから選手たちの前で話をする場もなかったんです。 ファンの皆さんへもそうです。球場にたくさん来ていただいて、応援していただいて、僕らはそれを全身で感じることができて、力に変えさせていただいた。本当に感謝しかありません」 40歳で初めてタクトを振るった監督1年目の幕は突然に下ろされてしまった。その悔しさが消えることはないのだろう。しかし、強く握りしめた拳を開けば、それ以上の価値あるものが手のひらの上に残っている。 「この経験を、絶対に生かさないといけない。それは強く思っています」 今江氏がインタビューの中で、どの言葉よりも力を込めたのは、この「絶対」だった。 終わりではなく、次への始まり――― 誰にも奪うことはできない強靭な意志が、その言葉には宿っていた。 ……・・ 【さらに読む】楽天・今江監督まさかの「続投白紙」…有能評価も球団トップが見過ごせなかった「ある一件」
週刊現代、鷲崎文彦