【米国株ウォッチ】競合の合併で競争激化が予想されるアドビ、それでも株価は割安か
ストックイメージ、ビデオ、音楽のプロバイダーであるGetty ImagesとShutterstockが合併し、37億ドル(約5900億円)の会社を設立することで合意した。Getty Imagesの株主は統合後の企業の55%を所有し、Getty Imagesの現CEOであるクレイグ・ピーターズが統合後の企業のトップに就任する。 このニュースは両社の投資家に歓迎され、米国時間1月7日の取引でGetty Imagesの株価は25%、Shutterstockの株価は14%上昇した。この合併により、年間1億5000万ドル(約237億円)から2億ドル(約300億円)のコスト削減が見込まれる。統合された新会社は、Adobe(アドビ)にとってより大きな競争相手となる。 アドビもストックイメージ、グラフィック、ビデオのコレクションを提供している。Getty ImagesとShutterstockがそれぞれ4億7000万点のコレクションを持っているのに対し、アドビのコレクションは3億点以上と少ない。生成AIの導入が進むなか、画像や動画の需要が高まっている。アドビはすでに、生成AIツールのFireflyを通じて、AIが生成した画像やバリエーション、テキストから画像への変換機能を提供している。Getty Imagesもまた、提供するサービスを強化するためにAI機能の開発に取り組んでいる。 ■アドビ株の直近の動向 アドビ株はここ数カ月荒れ模様で、2024年12月初旬につけた520ドル付近から現在は420ドルまで下落している。その原因の多くは、2024年第4四半期決算の不振と、AI事業の進展に対する投資家の懸念の高まりにある。 アドビの2024年度決算における収益は前年度比11%増の215億ドル(約3兆4000億円)だった。デジタルメディア部門の収益は同12%増の159億ドル(約2兆5200億円)、ドキュメントクラウド部門の収益は同18%増の32億ドル(約5100億円)だった。同社は、顧客がより高価格のサブスクリプション・プランに移行し、顧客1人あたりの平均収益が上昇した恩恵を受けている。サブスクリプションサービスからの収益は安定しているようだが、AI事業の進展については、これまでのところ、より良い収益成長率の達成には役立っていない。 過去4年間におけるアドビ株の年間リターンは、S&P500種株価指数よりもかなり不安定である。2021年の年間リターンは13%、2022年はマイナス41%、2023年は77%、2024年はマイナス25%だった。 ストックイメージの提供における競争の激化や、AIによる収益の伸びが全体的に予想より鈍化していることを考慮したとしても、アドビ株は割安と思われる。現在の株価水準である420ドル前後で計算すると、アドビ株の株価売上高倍率は9倍であり、これは過去5年間の平均の15倍よりも低い。バリュエーション倍率の若干の低下は正当化されると思われるが、過去の平均に対する現在のギャップは高いと思われ、このギャップは今後数四半期で縮小すると思われる。 アドビのAI投資による有意義な成長はまだ見られないが、創造性と生産性を高めるソリューションの強化により、ユーザー・エンゲージメントの向上から利益を得ることができる。そのため、現在の下落局面でアドビ株を選ぶことで、長期的には大きな利益を得られると私たちは考えている。
Trefis Team