岩井ツインズの“無意識シンクロ”を見たか? 千怜と明愛の「似てる」「似てない」徹底検証
◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 最終日(27日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6650yd(パー72)◇曇り時々晴れ(観衆4752人) 【画像】岩井千怜の真っ赤なヘッド アマチュア時代、大胆なショートカットにした岩井明愛を見て「私にはできないです」と千怜が笑った。小さい頃はおそろいだったこともあるヘアスタイルは、今では明愛のショート、千怜のロングがおなじみに。「似ているところもあるけど、あきちゃんとは似ていないかなあ」と、性格の共通点を探そうとすると意外と少ない。周囲から見ればそっくりに見える二人、果たして本当はどうなのだろうか。 父の影響でゴルフを始め、これまで実力にプラスして“ツインズ”として注目されてきた。2021年に受けたプロテストは同時合格。同年に千怜がステップアップツアー「カストロールレディース」で初優勝を遂げると、2週後の「山陽新聞レディースカップ」を明愛が制して史上初の“姉妹連勝”を飾った。昨年はレギュラーシーズンで明愛が3勝、千怜が2勝。千怜が制した5月「RKB×三井松島レディス」では山下美夢有を加えた3人が首位でホールアウトし、これまたツアー史上初の“姉妹プレーオフ”が話題になった。 今週の姉妹ワンツーフィニッシュは、その時以来の2度目。それも地元の埼玉県で達成したのだから、会場は大いに盛り上がった。単独首位から出た千怜を4打差から追い上げたのが双子の姉。千怜は「途中リーダーボードを見たら明愛の名前が2位。そこでまずビックリ。地元だから頑張ろうっていう気持ちが、二人とも強いんじゃないかなと思って見ていました」と笑ったが、優勝争いの相手が明愛でも、心構えは普段とまったく変わらなかったと振り返った。
ちなみに最終日の朝は自宅からコースまで別々に移動。ロッカールームで顔を合わせても、試合についての会話はなかったと言う。優勝を決めた後は、グリーン脇で見守っていた明愛が「ちょっと悔しいのと、素直に千怜の優勝を久々に見られてうれしい」とハグで祝福。千怜も「あきちゃん、ナイス」と言葉を贈った。優勝の喜びも負けた悔しさも分かち合えるのは、お互いのほかにはいない。 一緒に育ってきた双子の姉は、時にプロゴルファーとして優勝を競る相手になる。「ドライバーは飛ぶし、スイングがきれい。明愛の雰囲気は、わたしと違ったものを持っているのでカッコいい」。足並みがそろっているようで、千怜が明愛のことを話す口調はリスペクトにあふれている。 「お姉ちゃんの方がおおらかで、安定している感じがする。私は結構、うれしかったり悲しかったり、浮き沈みがあるんです」 追う立場、追われる立場の違いも大きいが、この日も明愛は勝負の中でも楽しそうな笑顔をのぞかせ、“魅せる”ゴルフに徹底していたように見えた。最終日2度目の“直ドラ”でイーグルチャンスにつけた18番(パー5)も、グリーンに上がりながら手を耳に当て、両手であおってギャラリーの歓声を全身で楽しんだ。
その2組後ろで18番グリーンに入った千怜が、見ていないはずの明愛と全く同じ動作で観客をあおった。「え、本当ですか!ビックリですね」。もちろん事前の打ち合わせはしていないというから、こちらがビックリだ。「似ていない」という千怜の言葉に「本当に?」と聞きたくなるが、確かに千怜の方が少しだけ、観客に向けた笑顔は照れくさそうに見えた。(埼玉県飯能市/谷口愛純)
谷口愛純