学び直したい高齢者、日本語学びたい外国人の子 「夜間中学」の複雑な実態
義務教育を終えていない人たちへの教育の機会とする「夜間中学」の新設・拡充を目指すための調査が自治体で行われており、長野県教育委員会も議論を始めました。13日には教職者や教育支援のNPOなどの関係者が課題検討会を開催。勉学を目指す「義務教育未終了者」と不登校などによる「形式卒業者」、「外国人子弟」の3者が混在する夜間中学の現状から多くの課題が浮き彫りになりました。
義務教育の未終了者は12万人以上?
文科省によると夜間中学は市町村が設置する中学校で行われる夜間学級を指し、今年4月現在、8都府県25市区の31の中学校に設けられています。 この調査は、義務教育の未終了者が全国に少なくとも12万人以上いる(2010年国勢調査)ことから、少なくとも各都道府県に1校の夜間中学の設置促進を目指す施策の一環。調査を希望する自治体教委が既存の夜間中学の実態、設置の意義、問題点、設置方針の在り方などを調べ、文科省の今後の施策に反映させるとともに、自治体での設置についても論議します。 県内に夜間中学がないため調査を希望した長野県教委の「中学校夜間学級設置における課題検討会」は、荒井英治郎・信州大学教職支援センター准教授を座長に県内の中学・高校の校長、教育長、教育関連のNPO代表ら8人の委員で構成。夜間中学を設けている東京・葛飾区教委の小山節・指導主事と同区立双葉中学校の森橋利和副校長を招いて夜間中学の実情を聞くとともに、東京都内の夜間中学の視察報告をもとに論議しました。 小山指導主事は▽都内には夜間学級が8校あり連絡協議会で交流している、▽入学の条件は小中学校を卒業していない人、不登校などで学べなかった人、都内在住・在勤で15歳以上であること、▽入学手続きは教委で相談を受け付け、説明し、通学や就学が可能か判断の上、面接。実際に学級に入ってもらう試験登校を経て審査で可否を決める――などを説明しました。
外国籍の子どもが92%を占める夜間中学も
しかし本来、義務教育未終了者を対象とする夜間中学の実態は複雑で、森橋副校長は「外国籍の子どもが中学校によっては92%に達し、ネパール人が増えている。口コミで志望してくるようです」と説明。日本語が分からない子供がほとんどなので、英語や中国語が話せる教員が間に入って意思疎通を図ることも。入学しても生活習慣の違いや日本語習得の困難などが課題になっています。 さらにかつて朝鮮半島などから日本に移り住んで教育の機会が十分なかった在日外国人や「もう一度勉強したい」という80代の高齢者なども含まれます。「加えて不登校で満足に学校に行けなかったので“学び直し”をしたい、と志望する人もかなりいます」と森橋副校長。 夜間中学はこうした生徒たちに9科目を教えますが、外国籍の生徒の多くは「仕事を探すためにとにかく日本語を覚えたい」という目的が多く、ほかの生徒と目的意識にずれも生じます。森橋副校長は「必ずと言っていいほど“日本語を教えてほしい”と言ってくるが、それだけの目的の志願者は本来断らなければいけない。しかし、教育の機会を与えるということと、いずれ日本で活躍したいという子どもたちは受け入れざるを得ない」と現場での苦しい判断を語ります。