雑誌「男の隠れ家」編集部が選んだいいもの。100年の歳月を経て復活、幻と呼ばれた工芸品
■ぼかし─ うつろいが魅せる色彩美の世界 ■●薩摩ガラス工芸(鹿児島県)× 薩摩切子 【関連画像】雑誌「男の隠れ家」編集部が選んだいいもの。100年の歳月を経て復活、幻と呼ばれた工芸品 (※その他の写真は【関連画像】を参照) 夏になるとガラス素材の涼やかさと色彩で料亭の料理などを彩る、切子。この夏は江戸から遠く離れた薩摩の地で作られる「薩摩切子」を堪能したい。 「冷酒グラス cut01」は、広めに削られた飲み口がわずかにカーブしており、酒が心地良く緩やかに口の中へ運ばれる。女性の手にもちょうど良い大きさで、持ちやすい形だ。冷酒のみならず、冷茶やワイン、先付の器などにしても良いだろう。そして、そんな「薩摩ガラス工芸」の作る薩摩切子を「島津薩摩切子」と呼ぶ。 島津とは、弘化3年(1846)薩摩藩によるガラス製造を始めた、藩主の名である。嘉永4年(1851)島津斉彬が28代藩主になると飛躍的に発展を遂げ、海外との交易も視野に入れた美術工芸品「薩摩切子」が誕生した。 独自に着色ガラスの研究を行い、日本で初めて紅色の発色に成功。「薩摩の紅ガラス」として全国各地で称賛された。しかし藩主の急逝をきっかけに事業を縮小。明治10年(1877)の西南戦争前後に薩摩切子の製造は途絶えたという。 それから100年以上が経ち、昭和57年(1982)鹿児島の百貨店で開催された展覧会をきっかけに復元の機運が高まった。そして、昭和60年(1985)現在の前身となる会社が設立され、復元事業が始まったのだ。事業が進むにつれ、機械や技術の進歩、現代のライフスタイルに向けたデザインの研究が進み、色数も増え薩摩切子の美しさに磨きがかかっていった。 薩摩切子の伝統色は6色、藍・緑・黄・島津紫・紅・金赤。これらの発色は原料となる鉱物の違いと温度管理によって生まれる。なかでも紅と黄は数年かけて試験を繰り返し、たどり着いた珠玉の色。唯一「島津」がついた島津紫は、斉彬が好きな色でとくにこだわりがあったという。その鮮やかな発色には、純金が用いられている。さらに二色被せの「二色衣」、モノトーンの「思無邪」が加わり、多種多様な色彩世界を展開している。 薩摩切子の最大の特徴でもある「ぼかし」。柔らかなグラデーションに光を透かし、薩摩切子の歴史に思い馳せながら一献傾けたい。 深くしっとりと東洋的な色彩。「島津薩摩切子」はとても鮮やかで澄んだ色が特徴だ。色ガラスを厚く被せることで六角籠目や菊紋など多彩な文様とともに「ぼかし」や「段差」を作り、光の乱反射を生む。それらは日本の侘び・寂びの美さえ感じる。透明ガラスと色ガラスの際が生む光はなんともいえない。ぜひ、手にとって一度は鑑賞しておきたい。 【商品概要】 製品名:冷酒グラス cut01【島津紫×紅】セット 価 格:8万1400円 サイズ:高さ7cm、径7.2cm 容量:100ml 付属:桐箱 色:全6色 ※色ごとに価格が異なる 島津興業 薩摩ガラス工芸 鹿児島県鹿児島市吉野町9688-24 TEL:099-247-2111 公式HP: ※この記事は2024年8月号に掲載されたものです。