Cウッドを単走で追い切るリバティアイランド

＜追い切りの番人＞ 　“ダブル番人”がスターホース2頭を徹底分析！　G1馬6頭が集う天皇賞・秋（G1、芝2000メートル、27日＝東京）の追い切りが23日、東西トレセンで行われた。 　調教を深掘りする「追い切りの番人」は特別版として関西2強をピックアップ。大阪本紙の太田尚樹記者が3冠女王リバティアイランド（牝4、中内田）に、ベテラン岡本光男記者がG1・3勝馬ドウデュース（牡5、友道）に迫った。 　■リバティアイランド 　3冠牝馬が「貫禄の女王」になった。雨上がりのCウッドで弾む赤褐色の筋肉に目を奪われた。春までのリバティアイランドとは明らかに違う。特に肩やトモの盛り上がりが増し、フォームがダイナミックになった。馬なりで6ハロン85秒5－11秒3。中内田師も「体がしっかりして走りにも重厚感が出ている。1つ2つ、成長してくれている感じ」と笑みを見せた。 　数字も雄弁に物語る。放牧中に最大538キロまで体重を増やし、2週前502キロ→1週前502キロ→今週500キロと推移。レースが近づいても減らない。実は昨夏も放牧先では522キロまで増量していたが、秋華賞には476キロで出走した。トレーナーに違いを聞くと「今回は体重を維持している。成長と思っていいのでは」という見解だった。 　故障明けでも手加減はない。5月に右前脚の種子骨靱帯（じんたい）に軽度の炎症が判明して、秋へ備えた。誤算とはいえ、調教の手綱をとる片山助手は「初めて長く休みがとれた。ひと回り大きく感じるし（体重が）減らないから、やりたいことがやれている」と“けがの功名”も指摘する。その言葉通り、調整過程はむしろ昨秋以上。調教タイムがすべてではないが、比較すると明らかに強い負荷を掛けられている。 　態勢は整った。先週の調教では乗る側から「正直、休み明けの雰囲気は否めないなとは思いました」と評した川田騎手は、今週は見る側から「1週前を経て、いい変化を感じられる追い切りで、特に心配なくレースを迎えられるのでは」と上昇を感じとっていた。 　そして距離短縮も見逃せない。昨年のジャパンCではイクイノックスに次ぐ2着。前走のドバイシーマクラシックでは前残りの展開を追い上げて3着。それでも2000メートルへの短縮に踏み切ったのは、適性を見いだしたからだろう。鞍上も「とても楽しみにしている舞台です」と期待する。 　成長、状態、距離。すべてにおいて、能力を全開できる条件がそろった。さあ、いよいよ、その充実を披露する時が来た。【太田尚樹】 　■ドウデュース 　ポリトラックコースの直線に向いた途端、ドウデュースの走りは大きくなった。特徴であるピッチの速さはそのままにストライドが広がっていく。1週前追い切り（Cウッド6ハロン79秒9－11秒0）後に武豊騎手をして「この馬は普通じゃない」と言わしめた豪快な走りは、この日も健在。馬なりの分、ラストは11秒2（6ハロン81秒1）だったが、少しでも仕掛けられていれば軽く10秒台だっただろう。 　「1週前は武豊騎手に乗ってもらってやったが、豊ジョッキーのコメント通り完璧だった。その時点で体はできていると思ったので今週はポリトラックで。秋初戦としては絶好調」と友道師は絶賛した。 　走法は見た目にも独特で、21年朝日杯FSの1週前追い切り時点で、記者も「これは！」と思った。実際、騎乗者はどう感じているのだろうか。 　同馬のほとんどの調教にまたがる前川助手は「体の可動域が大きくて、前脚と後ろ脚が大きく交錯するイメージ。チーターみたい」と表現する。脚の振れ幅が大きい分、前後の爪がぶつかることも多く、爪にプロテクターを着用している。「以前はそのプロテクターもすぐにボロボロになった」というが、今は違う。「走りがぶれなくなって、可動域は大きいままに爪が当たらなくなった」。その点が5歳秋を迎えての進化だろう。 　「こんな馬、乗ったことがない」。かつて所属した角居厩舎や、現在の友道厩舎でも数々の一流馬に乗ってきた前川助手は言う。昨年の天皇賞・秋は7着。友道師は「今回の方が自信を持って挑める」と手応えを感じている。進化した走りを結果につなげる。【岡本光男】