センバツ2024 喜びの星稜、航空石川、敦賀気比(その1) 被災地に笑顔を /石川
26日にあった第96回選抜高校野球大会の選考委員会で、昨秋の北信越大会で優勝した星稜(金沢市)と準優勝の敦賀気比(福井県敦賀市)に加え、同大会で4強入りした日本航空石川(石川県輪島市)が出場校に選出された。同校は元日の能登半島地震で校舎や寮が損傷。部員らは系列の日本航空高校山梨キャンパス(山梨県甲斐市)に一時移転しており、避難先の関係者らと歓喜を分かち合った。石川県からのセンバツ2校出場は、2020年大会(新型コロナウイルス禍で大会中止)で両校が選ばれて以来4年ぶり。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◆星稜 ◇一生懸命を見せる 星稜(金沢市)の室内練習場では、鍋谷正二校長が出場決定を野球部員たちに伝えた。鍋谷校長は「皆さんは石川県大会、北信越大会、神宮大会と素晴らしく成長してきました」とたたえ、「この春もさらなる成長を見せてください」と期待していた。 部員たちはこの日、能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげた。山下智将監督は「グラウンドは今も使えない状況が続いているが、生徒はみな無事で頑張ってくれている」と語り、「(被災して)大変な思いをして生活している人がたくさんいる。とにかく一生懸命やる姿をお見せできれば」と語った。 佐宗翼投手(2年)は「野球をできることが当たり前じゃないということが分かった。感謝の気持ちを持ってしっかりやっていきたい。まずは1勝することで、少しでも応援になれたら」と誓った。芦硲(あしさこ)晃太主将(2年)は「本校、また石川県にまだ優勝旗を持ち帰ることができていない。必ず持ち帰りたい」と闘志を燃やした。【深尾昭寛、阿部弘賢】 ◆日本航空石川 ◇甲子園で恩返しを 日本航空石川の選手らは吉報を避難先で聞いた。選考委のライブ中継で校名を呼ばれても、選手たちは顔を上げた程度と喜びの表現は控えめ。被災地の苦境を思ってか涙ぐむ選手もいた。 チームには石川県に加え全国から選手が集まり、元日は帰省していた。昨秋の大会でメンバー入りした富山県出身の4選手は実家などで大きな揺れに襲われた。猶明光絆(ゆうめいこうき)投手(1年)は「育った氷見も被災した。恩返ししたい」と自分たちの活躍で被災者を勇気付けるつもりだ。 富山出身は、猶明投手と小中学校で同級生の長井孝誠(1年)、高岡市出身の北岡颯之介(2年)、射水市出身の久々江(くぐえ)翔吾(同)の各選手で、「野球のことは考えられなくなった」と声をそろえる。 しかし、山梨県を拠点に野球ができる環境が用意され、練習場所の同県富士川町では地元住民らが炊き出しなどで元気付けてくれた。長井選手は「支えてくださった人の分までしっかり頑張りたい」。甲子園は恩返しの場になる。【大和田香織、鈴木英世】 ◇郷土代表として被災者に希望を 輪島市長が祝福 日本航空石川のセンバツ出場について、地元・石川県輪島市の坂口茂市長が同校に祝福のメッセージを寄せた。能登半島地震の被災者にお悔やみ・お見舞いの意を表明したうえで「郷土の代表として、日本航空高校石川の皆さんのはつらつとしたプレーで、被災者の皆さんの心に、元気と勇気と希望を伝えてくださることを期待します」などとしている。 ◆敦賀気比 ◇まとまりの力発揮 敦賀気比ナインは午後4時ごろ、一面雪の野球部専用グラウンドで、古谷清和校長から出場の知らせを受けた。古谷校長は「北信越に敦賀気比あり、という試合を期待しています」と激励した。 敦賀気比は、春夏合わせた甲子園連続出場が昨夏に5季で途絶えたが、ブランクを1季にとどめ、甲子園の舞台に立つ。東哲平監督は「続けて出るのは難しいが、子どもたちが頑張ってつかんだ」と選手をたたえた。昨春センバツも出場した西口友翔主将(2年)は「先輩を見ていて、甲子園に行けるのが当たり前だと思い込んでいた部分があった。改めて特別な場所だと思えたし、今回は昨年よりうれしい」と、喜んだ。 選手や指導者がそろって指摘する現チームの強みはチームワークだ。東監督は「ずば抜けた選手はいないが、まとまりがある。徐々に力をつけているので甲子園で発揮してほしい」と話し、まずは3年連続で敗れている初戦の突破を目指す。【高橋隆輔、写真も】