医療的ケア児と住民が交流 「すくすくファーム」開設(千葉)
千葉県柏市にある医療的ケア対応複合施設「すくすくハウス」(社会福祉法人ワーナーホーム、寺田一郎理事長)が、敷地内にコミュニティー農園「すくすくファーム」を開設した。ハウスに通う障害者が地域住民と一緒に野菜を育て、収穫することなどを通じて交流を深め、安心して過ごせる未来をつくることを目指している。家庭の生ごみを堆肥に変えるコンポストを利用することで環境にも配慮する。 地域ニーズに応える 医療的ケア児は全国に約2万人(2021年)いるとされ、医療技術の進歩により十数年前から2倍に増えている。21年9月に医療的ケア児支援法が施行されたが、現状では医療的ケア児・者が通い、働ける場は不足しており、家族は子育ての負担や将来の不安を抱えている。 そうした実情を受け、1981年に精神障害者の作業所から始まり、「一貫して地域のニーズに応える方針で取り組んできた」(寺田理事長)という法人では、医療的ケアや重い障害のあるこどもから大人まで安心して暮らせる未来をつくろうと、2020年3月に「すくすくハウスプロジェクト」を立ち上げた。 地域のさまざまな事業所に募金箱を置いてもらうなどして支援を呼び掛けると、徐々に応援の輪が広がり、土地を貸与してくれる人も見つかった。クラウドファンディングでは建設資金として延べ382人から1226万円が集まった。 23年7月にハウスを開設。約2000坪の敷地で放課後等デイサービス、児童発達支援、生活介護、就労継続支援B型など計9事業を運営する。 社会の一員として 農園では車いすでもぶつからない大きなプランターでタマネギやカブなどを栽培する。障害者が水やりをしたり、野菜の成育の様子をSNSに投稿したりして、地域社会の一員としての役割を担っていく。ハウスを利用している谷川心優くん(4)の母、美香さんは「社会に役に立つことができれば親も安心できる」と言う。 堆肥づくりは地域住民に協力してもらう。バック型のコンポストを購入し、基材と家庭の生ごみを約3カ月混ぜ、堆肥になったら持ってきてもらい、農園で使う。基材も購入してもらい、販売額が障害者の賃金などになる。収穫した野菜は併設するカフェ(就労継続支援B型)やハウスのイベントで使用する。 大久保夏樹統括施設長は「農園で障害のある人もない人も一緒に過ごす中で、お互いにどう助け合えばよいか考える瞬間ができ、それが安心して暮らせる未来をつくることにつながっていけば」と話す。26年までにコンポストの参加住民を200人に、地域の生ごみの月2・4トン削減も目標としている。 10月19日に開かれた農園のお披露目会で寺田理事長は「農園は本日芽を出した。法人、職員が大切に育てていくが、地域に支えられることで元気付けられ、励まされ、歩みを進めることができる」と話し、地域住民との連携、交流を大事にして取り組んでいくとした。