「入試のためじゃない」活動で大学へ 「年内入試」に向いている受験生は?
入試のための特別な準備は必要ない
筑波大学ビジネスサイエンス系の吉田光男准教授は、同大学の卒業生です。専門領域は、主にウエブで得られる大規模なデータを活用する「ウエブ情報学」という分野。「SNSによる社会の分断の分析」や「学術情報探索の支援システム」などのテーマを扱う研究者であると同時に、自ら立ち上げた法人の代表も務めています。 早くからこのジャンルに関心を抱いていた吉田准教授。約20年前の大学受験時、筑波大学のAC入試でアピールしたのは、高校時代から手がけていたウエブサービスの実績でした。複数の検索エンジンで横断的に検索し、独自のアルゴリズムで結果を表示する検索サービスなどを高校在学中に開発。受験のための大学の検定料はその広告収入から自分で支払ったそうです。 A4の推薦書と1枚のCD-ROM を提出し、結果は無事合格。AC入試のメリットを聞くと、吉田准教授は「特別な準備がいらないこと」を挙げました。 「この入試方法で大切なのは、『実績』です。この先どうしたいかなど、将来のことを語らせるものではありません。また、入試のためだけに何か特別な準備が必要なわけでもありません。自分のやってきたことを自己推薦書としてまとめて提出するだけです。そのため、面接がふるわなくても、推薦書の中身が優れていれば合格できることもあると思います。でもその逆は聞いたことがありません」
「AC入試に不安を抱くようなら…」
吉田准教授は、「自分のやってきたことをどれぐらい評価してもらえるのか見てみたい」という気持ちも大きかったと言います。「もしAC入試を受けることに不安を抱くようなら、その時点でおそらくこの方法には向いていないと思います」 2人の吉田さんに共通しているのは、高校時代から自分なりのテーマを持ち、自分の個性を強みに変えることができたということです。2人は受験時、すでに研究者としての課題を持っていました。これから何を始めたいかではなく、そこに至るまでの実績が評価対象になるAC入試は、決して一朝一夕で合格を勝ち取れるものではないことがわかります。 自らの主体的な活動や研究内容を入試に生かせる大学は増えています。東京都市大学の「学際探究入試」や関西学院大学の「探究評価型入学試験」、奈良女子大学の「探究力入試『Q』」など、「探究」を冠した入試方法を設ける大学も複数見られます。いずれの大学も自ら課題を発見し、考える力を持つ学生を求めています。一般選抜以外の選抜方法にも目を向けて、自分に合った入試方法を選ぶことが、合格への第一歩と言えるでしょう。
朝日新聞 Thinkキャンパス