青山に“新名建築スポット”誕生! 戦前モダニズム建築の傑作「土浦亀城邸」が一般公開へ…フランク・ロイド・ライトに師事
調査は約6年。「復原」にこだわる
1998年に信子が逝去した後は元秘書が引き継いでいたが、その後空き家となり、2018年に建物調査がはじまる。陸屋根や木製建具の窓枠からの漏水とシロアリによる被害が激しく、特に基礎周りの躯体の腐敗がかなり進行していたという。 そもそも土浦邸は1938年に増築をし、戦後に外装を変更、1970年頃に改築をし、移築前の姿に戻ったという経緯がある。今回は竣工当時の姿に戻すことを目指しており、そのため「復元」ではなく、オリジナルに戻すという意味で、文化財建造物の修復の際に用いる「復原」という言葉を使っている。 復原の作業は綿密な調査と歴史考証により実現した。まだカラー写真もない時代。内装は白黒の写真から検証し、可能な限り当時流通していた部材を探し、ない場合は質感の近いものを採用。当時のものが使えたサッシや建具などはできる限り修復を行った。さらに外装の色は経年変化しているので、壁をこすり出して調査し、元の色に近づけたほどの徹底ぶりだ。 約90年もの間、壊されずに残ったことも驚きだが、まるで新築のような姿で新たな地に生まれ変わったのは奇跡と言えるだろう。東京の街は、日本家屋の広がる住宅街風景から高層ビルが立ち並ぶ大都会へと大きく変化した。ビルの間に建つことになった土浦亀城邸の第二の人生は、始まったばかり。一般公開の予約は9月2日からを予定している。ぜひ足を運んでほしい。
土浦亀城邸
公開期間:2024年9月~予約制で一般公開 ※月に2回、1日2~3回のガイドツアーを実施予定 公開場所:ポーラ青山ビルディング敷地内土浦亀城邸 東京都港区南青山2-5-13 公開日:水、土(予定) 料金:¥1,500 ※小学生以上一律 ※2024年 9月2日(月)10時より予約開始
編集&文:井上倫子