岸田総理の「トップ・プライオリティ」は日本経済ではなく、「9月の総裁選を乗り切るため」の方策
「教育の無償化」という考えから、緊縮財政から方向転換する可能性もある渡海紀三朗氏
須田)私が期待したいのは、渡海紀三朗さんは兵庫県選出の国会議員で、なおかつ文教族という点です。国ベースで教育の無償化を進めたいという意向を持っているらしいのです。兵庫県選出の国会議員ですから、関西では維新の会の脅威にさらされています。「教育の無償化」は維新の看板政策ですよね。 飯田)しかも、知事も維新が獲りました。 須田)教育の無償化を国ではなく、地方自治で行えば、維新に「押せ押せ」になられてしまう。教育無償化には兆円単位の費用が掛かります。しかし、非社会保障費、年金と介護、医療を除いた部分で、3年間で年度の当初予算「純増1000億円」しか認められていないのです。年間で333憶円となると、とてもではないですが教育無償化はできません。そのような部分もあり、渡海紀三朗さんは教育の無償化を進めるため、場合によっては「緊縮財政だと成長できない」と考え、方向転換する可能性もあると思います。
過去の例からも消費税増税すれば経済は失速する
飯田)教育無償化は安倍政権時代に打ち出されましたが、当時はそれと消費税が紐付いたところもありましたね。 須田)財源論が出てきてしまうと、やはり増税になってしまいます。ただ、いま増税を行ったら個人消費は大きく冷え込みます。過去の例を見ても、日本経済が失速したのは消費税増税によってです。数値が物語っています。 飯田)最高値を記録していたバブル期に導入した際は、物品税を下げたこともあって影響を受けませんでした。しかし、そのあとは3%から5%に上げたときも、5%から8%に上げたときも、8%から10%に上げたときも、みんな失速しました。
実質実効為替レートを見れば、日本経済は最弱の状態にある
須田)株価が上がっているため浮かれ調子になっていますが、為替レートを見てください。特に実質実効為替レートです。諸外国の外貨と比べて日本の円の価値はどうかと言うと、史上最低です。 飯田)円安ですね。 須田)これほど円安になった時代はありませんでした。ドル、ポンド、ユーロなどと比べてみても非常に安い水準です。それは日本経済が弱いからです。輸出企業にとっては嬉しいことなので、経団連の十倉会長が喜んでいるのは、そういう部分もあるわけです。しかし、日本経済は弱く見られています。株価を見ると「好調ではないか」という感じですが、実質実効為替レートを見ると、日本経済はいま最弱の状態にあると強く認識すべきだと思います。