岸田総理の「トップ・プライオリティ」は日本経済ではなく、「9月の総裁選を乗り切るため」の方策
3年間「社会保障関係費以外の一般歳出の合計を約1000億円の増加に留める」方針が外れるかどうか
飯田)物価上昇も相まって税収も増えています。放っておいても財政が健全化すると考えると、余力があるわけですよね? 須田)そうです。既に次年度予算が成立するのは確実なので、霞が関や政治の世界では、2025年度予算に注目が集まっています。実は水面下で綱引きが始まっているのです。 飯田)2025年度予算の。 須田)6月に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)が次年度予算編成のスタートになるわけです。骨太の方針をめぐり、そろそろ概略が自民党の各部会で練られていくはずです。部会でつくられたものが政務調査会の平場、会議のなかで議論されていきます。そこで決定されたものが総務会へ送られ、自民党が了承し、内閣に戻されて閣議決定する運びになるのですが、このスケジュールから見ても6月の閣議決定に間に合わせるためには、そろそろ始めないと間に合いません。ところが前年と同じような形を踏襲すると、3年間で、純増で1000億円しか増えないという状況になるわけです。 飯田)社会保障関係費以外が。 須田)「1000億円のキャップ」と呼ばれているものですが、それが外れるかどうかが1つの大きなポイントです。
「財政健全化推進本部」の顧問が政調会長と総務会長のため、財政再建派の意見が政調会と総務会を通ってしまう
飯田)派閥解消などの動きがあり、1月末には財政健全化推進本部でメンバーの入れ替わりがありました。本部長が古川禎久さんになり、小渕優子さんなど「財政健全派が集まっているな」という印象を受けましたが、有力者を入れてネジを巻き直そうという狙いがあるのでしょうか? 須田)加えて最高顧問が麻生太郎さんで、顧問には渡海紀三朗さんと森山裕さんが入っているわけです。財政再建派の牙城である財政健全化推進本部の顧問に、政調会長と総務会長が名前を連ねている。そこが大きな意味を持つのではないかと思います。 飯田)引き締め派ということですか? 須田)引き締め派です。つまり、そこで了解してしまったら、そのまま政調会と総務会を通るということです。 飯田)本来は平場で十分な議論を行い、そこで決めるべきものなのに、形骸化する可能性があるのですか? 須田)そういう可能性もないわけではない。しかも平場の議論などは、ほとんど新聞が報道しないのです。平場の議論はどちらかと言うと積極財政派が圧倒的に有利ですから。 飯田)人数などで考えると。 須田)いまの日本経済は正念場を迎えていますので、「しっかりと政府があと押しするべきではないか」と主張したいけれど、なかなかそれが伝わっていかない構造もあるのです。