コロナ禍の世界経済 楽観と悲観を映し出す「銅」と「原油」
暴落した「原油」は供給過多が要因
それとは対照的なメッセージを発しているのが「原油」です。言わずと知れた景気のバロメータである原油(WTI)は、4月20日に史上初となるマイナス圏を記録しました。原油価格急落の背景は、コロナ問題の発生以前から供給過剰気味だったところに、(1)世界的な需要急減少が直撃し(需要側問題)、(2)さらに産油国の利害対立から十分な減産が進まないことです(供給側問題)。 本来、原油の生産量は需要予測に基づいて決定されるものです。したがって市場メカニズムが機能する状況下では、生産量がフレキシブルに調整され価格は安定します。しかしながら、現実の世界では各国の覇権争いから半ば意図的ともいえる供給過剰が引き起こされる傾向にあり、今回もその色彩が強い印象を受けます。ちなみに原油増産をチラつかせているサウジアラビアの原油の採掘コストは1バレルあたり3ドル以下とされ、世界最低水準です(米国シェール企業は30~40ドル)。それゆえ体力勝負に持ち込めば、他の産油国を駆逐することも可能です。こうして考えると、目下の原油価格下落は、供給側要因が大きいと考えるのが妥当に思えます。 以上をまとめると、目下の銅価格反発は景気回復(期待)を映じたものであると理解できるのに対して、原油価格下落は供給側要因が強く効いており、世界経済の弱さを誇張しているようにみえます。むろん、銅価格は世界経済の回復期待が削がれれば反落が予想されるため楽観は禁物ですが、原油価格の歴史的下落が示唆しているほど世界経済の基調は悪くないように思えます。
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