伝説のロックンロールバンド、BCG ROCKERSのリーダーで2019年からソロ名義で活動する愚図ケンジ率いる、愚図ケンジ&ショットガンロッカーズインタビュー
反骨心を歌う70年代フォークがルーツ。エレキに持ち変えてバンドを作るまではフォーク少年だった
――そんな愚図さんの音楽的なルーツというのは? 愚図 今作にさだまさしさんの『案山子』という曲を入れさせてもらったんですけど、もう1曲、アルバムには入れてないんですけど、この3人でアレンジして やってみた曲に中島みゆきさんの曲もあって。俺のルーツがそこなんです。元々、70年代フォークから(音楽に)入ってるんです。 ――愚図さんといえばロックンロールとパンクのイメージが強いのですが、実はルーツはフォークなんですね。 愚図 ギターと出会ったのが小学生の時で、当時はフォークブームだったんです。小学校3、4年生の時に親にアコースティックギターを買ってもらって、吉田拓郎とか、泉谷しげるとか、あのへんから入ったんです。そのあと中島みゆきを知って。自分が70年代フォークを好きなのは反骨心を歌ってるから。そういうイメージがわかんないかもしれないですけど、実は70年代フォークの人はものすごい社会派のメッセージを歌ってるんですよ。で、それをもっとエグい形で出してきたパンクロックが80年に出てきて衝撃受けるんです。これや!と思ってそこからエレキに持ち変えて、これをかっこよく日本語でやりたいなと。そういうアンテナを張ってる時に日本ではアナーキーとかが出てきて。これや!こんなバンド作ろうって作ったのがBCG ROCKERSなんです。だからエレキに持ち変えてバンドを作るまではずっとフォーク少年だったんです。 ――フォークからパンクを経て、BCG ROCKERSが誕生したと。 愚図 そうですね、だからヒントになったのは、80年代初頭に出てきたアナーキー、ARB、ザ・ルースターズ、あのへんがドーンと出てきた時に、これやー!と。当時、ザ・クラッシュとかセックス・ピストルズとかに影響されてるバンドっていっぱい出てきたんですけど、そうじゃなくて、日本のロックバンドを作りたかったんです。日本語を大事にして、メロディーも日本のちょっと懐かしい昔の歌謡曲とかに通じるような。だから、バンドを組もうと思った中学生の時は、ARBとかTHE MODSとかアナーキーとかとか聴き漁って、ライブとかも行ったことあるんですけど、自分がBCG ROCKERSをスタートさせてからはほとんど聴いてないんですよ。で、何を聴いてたかというと、今もそうなんです70年代日本のフォークから歌謡曲です。ちあきなおみさん、中島みゆきさん、吉田拓郎とか。だから、うちパッケージはゴリゴリのロックロールやけど、音並びとか言葉とメロディーの作り方は70年代なんですよ。 カツミ "ケンジさんのルーツはどこですか?"て、対バンの人によく聞かれたな。若い子はそういうルーツがちょっと見えないんでしょうね。 愚図 同世代でもゴリゴリのパンク畑からきてる連中は、イベントとかで一緒になっても、自分らが作るものとちょっと違うから。 "ルーツはどこですか?"と聞かれるんで、そのたびに、ルーツはフォークやと言ってます。 ――ちなみに、歌詞の中ではバイク愛を歌われていますよね? 『火の玉BABY』もそうだと思いますが。 愚図 そうです! ぼやっと聞いてたら女性と絡んだ話かと思うかもしれませんけど、自分の乗ってる愛車を女性に例えた歌ですね。完全なフィクションってあんまり書きたくないです。自分が経験したことか、ほんまに知ってること、そのシーンを切り取った歌詞しか書きたくないです。だからこの『火の玉BABY』をBCG ROCKERS時代に音源化しなかった理由もそこにあるんです。景気悪くなって、一回単車を手放したから、この歌歌われへんと封印したんです。(今は)また乗りだしたからこの曲を書いたんですよ。今まで50数年生きてきた中で1番好きなものは何かって聞かれたらオートバイです。 ――バイクではなく、オートバイなんですね。 愚図 (そういうほうが)なんか昭和感しませんか? もう我々は月刊オートバイを中学生ぐらいから読んでたので(笑)。我々の世代って、男の器を測るバロメーターは乗り物にどれだけ強いかと喧嘩がどれだけ強いかなんですよ。オートバイとか車乗らしてドンくさいやつはバカにされるし、オートバイと車に達者なやつはかっこいいしモテます。オートバイはひとつ(運転を)間違えたら一瞬で死ぬんですよ。だから男の子がやるもっとも危険な遊びなんです。安全運転ならまだしも、我々は飛ばすことが大前提ですから(笑)。ギリギリのところで命かけてる。そこがロックンロールと通じるんですよ。 ――そういう精神が歌詞にも反映されていると? 愚図 そうです。俺、作りもんは作りたくなくて。だからメジャーとも折り合いがつかなかったんです。いろいろお話はいただきましたけど、売れる方向に修正かけないといけないから。俺は1ミリの修正も許せない。 ――そういう精神で現在に至ると。 愚図 そうです。