ナイキ とアディダスの売上減と人員削減が意味する、スニーカー市場の変化。注目は「スニーカーラボ」の存在
ファクトリーラボの活動と今後
ファクトリーラボは収益分割モデルを活用して、提携パートナーの特徴や個性を表現したスニーカーブランドを生み出している。「(セレブの)誰もが、テキーラブランド、自身のワインやTシャツコレクション、または帽子のラインナップなどを持っている」とベイリー氏は話す。「多くの人が自分だけのシューズを欲しがっているが、スニーカーの機会には大きなギャップがある。大手ブランドではKPIを考慮しているため、その機会がない。大手の場合はビッグスターだけが大きな契約を獲得できる」。 ファクトリーラボは、昨年12月にマイアミ・ドルフィンズ所属のコーナーバック、ジェイレン・ラムジー選手と、今年2月にはサンフランシスコ・49ers所属のオフェンシブタックル、トレント・ウィリアムズ選手と提携してカスタムシューズの制作に取り組んだ。選手たちから同社にアプローチしたという。ファクトリーラボがシューズのコンセプトから少量限定生産での販売にいたるまですべてを担当し、シューズはファクトリーラボのeコマースサイトで販売された。ラムジー選手はインスタグラムで160万人、ウィリアムズ選手は45万人のフォロワーを抱えている。 「これは私がただスケッチして、(選手らに)承認してもらっただけというようなシューズではない。彼らは実際に我々のラボに足を運んでいる。プロトタイプを見せながらじっくりとクリエイティブな話を交わして、その後3Dプリントを行った。もし彼らが希望するなら、自分でミシンを操作することだってできる」。生産はロサンゼルスのスタジオと中国で行われている。 ベイリー氏によると、ファクトリーラボのセレブリティパートナーのファンコミュニティには、商品を入手するだけではなく、商品がどのように作られているかという舞台裏を見たがる人が多いのだという。たとえば、シューズのフォームがどのように作られているかについてのインスタグラムのリール投稿は1.5万回再生されている。 ファクトリーラボの場合、商品のプロトタイピングは2カ月、生産・出荷・納品は合わせて1カ月半から3カ月かかる。コストは、シューズが3Dプリントされたものか、従来のスニーカーのように複合部品で作られたものかによって異なる。 ファクトリーラボは4月、デザインパートナーであるフレッド・シーガル氏と共に、コーチェラで女性用スニーカーを発表する予定だ。今後のスニーカーパートナーシップについては、2028年のオリンピックと2026年の米国でのFIFAワールドカップに向けて、世界のアスリートたちと交渉を進めているという。 セレブリティとのパートナーシップは、新しいスニーカーラボにとってもっとも自然なパートナーシップモデルであるが、そのほかのモデルも続々と誕生している。そのなかには、デジタルファッションデザイナーとのコラボレーションに注力している企業の例もある。