お隣さんが《加害者》と《被害者》に…高騰がつづく日本マンションで、いま起こっている「意外すぎるトラブル」の一部始終
リスクの完璧なマネジメントは難しい
保険会社からのこの回答にAさんは、「管理規約を守って『個人賠償責任保険』に入っているのだから管理組合が支払ってほしい」という依頼を管理組合に入れますが、これにも清野氏はこう指摘します。 「個人賠償責任特約は、個人の日常生活に起因する事故を補償対象としており、外部所有者はお金を貰って部屋を貸す、つまり職務遂行の事故と判断され補償対象外となる可能性があります。 被保険者の範囲に外部所有者も入っているため、少額の請求であれば保険会社も支払うケースもありますが、このような高額な請求の場合は、保険会社も慎重に判断する可能性があります。指摘を受け対象外と判断されるケースもあるようです。 では、外部所有者はどのような保険に入れば安心かというと、家賃を得ている等、職務遂行でも対象となる施設賠償責任特約があります。 このケースの場合、強いていえばマンション共用部の損害保険から個人賠償責任特約を外す際、外部所有者には施設賠償責任特約に加入するよう、アナウンスする必要があったのかもしれませんが、管理会社または管理組合が外部所有者のリスクを完璧にマネジメントすることはとても難しい問題です」(清野氏) 戸数が増えれば増えるほど、所有者の保険を管理することは不可能であり、強制力もありません。そうした背景から清野氏の担当しているマンションでは『約95%のマンションが共用部の損害保険に個人賠償責任特約を付けている』とのことです。 損害保険には、さまざまな種類があり、それぞれ補償範囲が細かく決められています。その範囲から外れた事故や災害には保険金が支払われません。 万が一の安全のために入っていた保険が「全く使えない」ということもあります。 マンションは大勢の世帯がすむ村のようなものです。単に節約という理由だけで、切り捨てるのではなく「どんなリスクに保険をかけるのか」という観点から、慎重に判断をする必要があるのです。
松本 洋(マンション管理士)