お隣さんが《加害者》と《被害者》に…高騰がつづく日本マンションで、いま起こっている「意外すぎるトラブル」の一部始終
「保険のプロ」からの警笛
これら古いマンションの漏水事故が、全体の保険料値上げの大きな一因にもなっていますが、ではこの値上がりにどういった対策があるのでしょうか。 最近では 共用部の損害保険のうち、約3割を占める『個人賠償責任特約』を外して契約するマンションが徐々に増え始めています。 しかし、大手保険代理店のファイナンシャルアライアンスである清野孝道氏は、この対策には「管理組合にリスクが大きすぎる」と警鐘を鳴らします。 「漏水事故の際、加害宅に復旧工事の保険対応をお願いしても50%以上は『保険に入っていない』と回答します。加害宅の保険対応に過度な期待はできません。 そもそも、個人賠償責任特約に未加入の方も一定数いると考えられますが、自分の保険内容を完璧に把握できている人はごく僅かです。 また、漏水事故にも様々な原因があり、加害者意識のある事故とない事故に分けられます。 例えば洗濯機のホースが外れた事故は、加害者意識のある事故で比較的加害宅の協力を得やすいです。一方、壁の中にある見えない給排水管等から漏水した場合は、加害者意識がない事故と言えます。 こうした見えない部分からの漏水がマンションでは非常に多く、そうした背景から、親切に対応してもらえないケースは多々あるようです」(清野氏) 清野氏によれば、事故の原因が「高圧洗浄にも協力しているため、排水管からの漏水に責任はない」と言い張る加害者もいたそうです。 この事故があったマンションでは前年の見直しで、共用部の損害保険に付いていた個人賠償責任特約を解約していました。被害宅の保険にも水濡れ補償は付いていないため、結局泣き寝入りとなってしまい、被害宅が実費で復旧を行うことになったそうです。 また別のマンションでは、被害宅の原状回復費用と修繕工事、加えてその期間に一時退去したホテル代なども含めて1,000万円以上を請求されたという実例もあります。 このマンションでは、事故の場合は住戸間で対応するという切り替えを行ない、かつ管理規約を改正して『個人賠償責任保険は、区分所有者が加入するものとする』規定を追加したといいます。 マンションで漏水事故を起こしたのは、この部屋を借りていた住人であって、区分所有者(Aさん)が加害者ではありませんでした。それゆえ『個人賠償責任保険』を“そこに住んでいない所有者”のためには使えないということから、保険料が支払われないという事態に至りました。