文化をはぐくむ再開発とは?吉川稔の「つくらない都市計画」
東邦レオは日本有数の夕陽スポットとして注目される香川県三豊市(みとよし) の父母ヶ浜(ちちぶがはま)などで、こうした場づくりやイベントを企画したりしているが、そうした「場」の中でも象徴的なのが大阪の中津にある「西田ビル」の再開発だろう。 巨大商業施設やタワーマンションが林立する「うめきた」エリアから通り一本を隔てて中津に入った途端、低層ビルしかない下町情緒あふれる街が広がる。その中津で最も存在感のある築58年の西田ビルに誰もが使える「ハイパー縁側」を設置し、地元の人を巻き込んだトークイベントなどを開催。 さらにはこの土地ならではの価値をつくろうと建物内にクラフトビールの醸造施設を設置。多くの常連が集まる人気のスポットになった。 吉川はここで隈研吾らとともに、オフィスに縛られない「半ノラワーカー」と呼ばれる新しい働き方を模索する実証実験を行なったり、オフィスにテナントを入れた状態で二度目のリノベーションを進めるなど、これまでの常識を覆す新しい試みを行うようだ。 今後、果たして吉川の予言どおり、東京の再開発が文化合理性中心にシフトしていくかを確認するにはもう少し時間がかかりそうだが、その間にも吉川がリノベーションに関わった「場」には幾多の文化、歴史が刻まれていきそうだ。 BY NOBUYUKI HAYASHI