大型補強時代から若手育成時代への転換期に飲まれた村田修一ら戦力外の悲哀
セ・リーグ初の“下克上”でCSを3位から勝ち抜き日本シリーズに進出した横浜DeNAも、2年目の今永昇太、新人の濱口遥大、3年目の石田健大の若い左腕トリオが旋風の原動力となり、4番は筒香嘉智が支えた。横浜DeNAも若手育成に成功している代表チームで通算97勝の久保を自由契約にしたこともショッキングな話題にはならなかった。 「超変革」をテーマに2年前から若手育成を全面に押し出した金本阪神も、一定の成果を出していて、昨年オフは、オリックスからFAで糸井嘉男を獲得したが、今オフはFA補強からは撤退。日ハムの中田翔をFAで獲得することも早々に見送っている。 そして大型補強時代の先頭を走っていた巨人が、ついにその方針を見直して村田を切ったのである。2年前から3軍制を取り入れて、鹿取GMも機会があるごとに「若手育成」を口にしている。 球界全体に、世代交代、若手育成へ舵を切る時代の波が押し寄せているのである。 西武が楽天を離れた42歳になるベテランの松井稼頭央をコーチ兼任で獲得したが、この移籍の背景には、「松井はかつてチームの顔だったOB」「メジャー経験もあり指導者としての期待値が高い」などの含みがあり、少し補強の意味合いが違っている。 時代が時代ならば、争奪戦に発展していたはずの、村田修一、久保康友らになかなか声がかからないのも納得できる。 戦力不足に頭を悩ます現場の監督にしてみれば、ローテーの穴を埋めることのできる久保や、三塁、一塁を守れて一発のある右打者の村田は欲しいだろう。監督就任直後にロッテの井口監督も村田へラブコールを送っていた。「勝負と若手育成」は、そう簡単に両立しないのが現実ではあるが、球団が、「若手育成の方針」を含めて中長期の再建計画を打ち出した場合には、逆に現場も割り切れるのかもしれない。
あるパ・リーグの編成担当は、久保について、「細かいボールの変化や出し入れ、クイックを上手く使いタイミングを外しながら打ち取っていく職人タイプの久保は、まだストレートも140キロ後半まで出るのが、十分に戦力になるだろう。ただ、力勝負のパ・リーグでは難しいのかもしれない。ごまかしきれないところもある。どちらかと言えば、セ・リーグ向き。本来なら、最も手を出しそうな巨人が若手育成に方針転換したから厳しいね。投手を補強したいのはヤクルト、中日だろうけど、予算や選手枠の問題が出てくる」という見通しを口にしていた。 各球団の編成部の見通しを総合すると「FA選手の行き先が落ち着き、新外国人の補強が終わった時点で再検討されるだろう」というものである。 国内移籍を念頭にFAを行使した投手が日ハムの増井浩俊(33)、西武の野上亮磨(30)の2人、彼らの行き先が落ち着き、野手に関しては新外国人の補強が決まってからでないと再検討が難しいというのだろう。 村田、久保の他にも、3度のセーブ王を獲得している元日ハムの武田久投手(39)、元ロッテの古谷拓哉投手(36)、元広島の梵英心内野手(37)、トライアウトに参加した元西武の木村昇吾(37)らの去就もまだ正式には決まっていない。時代の転換期のうねりに飲まれた悲哀とも言えるが、ユニホームを脱ぐには、「まだ早い」「まだ勝てる」「まだ打てる」選手たちである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)