大型補強時代から若手育成時代への転換期に飲まれた村田修一ら戦力外の悲哀
巨人を自由契約になった村田修一(36)、横浜DeNAを自由契約となった久保康友(37)らの実績も実力もある戦力外の男たちの行方が決まらない。先日、マツダスタジアムで行われた12球団合同トライアウトに集結した各球団の編成担当者の声を拾ったが、そこで見えてきたのが、FAを主体とした大量補強時代から、世代交代、若手育成に球団の経営方針を転換しようとしている時代の流れだった……。 トライアウトに出てきた実績のある選手は元ソフトバンクの大隣憲司(33)くらいだった。そこにいなかった投打の戦力外選手についての動向や意見を聞きに、各球団の編成担当者を取材して回ると、ある共通のキーワードが重複して聞かれた。 「世代交代、若手育成」というキーワードだ。 「村田や久保は戦力にはなると思う。少し前の時代なら争奪戦になっていただろうね。補強することでチームの弱点を補うと同時にチーム内競争も激しくなると言えば聞こえはいいが、ベテランを取ることで若手の出場枠やチャンスがひとつ減る。広島や横浜DeNAが生え抜きの若手を使い育てて、彼らがチームの軸になってチーム成績につなげ、それが球界の流れになってきた。若手育成には、まず我慢して使うことが重要。そうなると、よほどの故障者が出るなどしない限り、ベテランを他所から取ってくるという選択肢は消えてしまう。若手育成が優先だしファンも球団方針を支持してくれている時代になっている。そう考えると、どこも検討、会議に乗せているだろうけど、FA選手が落ち着くまで、なかなか交渉が本格化しないよね」 某球団の編成担当は、そう本音を教えてくれた。 優勝を宿命づけられた巨人は、毎年、ストーブリーグの主役だった。昨年オフも、横浜DeNAの山口俊(30)、日ハムの陽岱鋼(30)、ソフトバンクの森福允彦(31)ら3人をFAで補強したが、山口が不祥事で戦列を離れるなど、大きな戦力にならず結果はBクラスに終わった。大量補強時代を先行していた巨人が、それでは勝てなくなった。 逆に大型補強に背を向けて生え抜きの若手育成の球団方針を貫いてきた広島がセ・リーグを連覇した。2017年のベストナインにも広島から5人が選ばれた。捕手の曾澤翼、二塁の菊池涼介、遊撃の田中広輔、センターの丸佳浩、ライトの鈴木誠也が選出され丸が「センターラインをチームで独占できたのは誇り」と語ったが、いずれも20代の生え抜き5人。この広島のチーム構築のスタイルが理想の経営モデルとして他球団から見直されることになったのである。 元ヤクルト、西武監督の広岡達朗氏も、「自前で選手を育てチームの中軸を固める広島の球団作りが理想的だろう。参考にしなければならないチームがたくさんある」と、評論されていた。