廃棄していたカキ殻、豊富なミネラルを田んぼで有効活用…「的矢かき」×酒「半蔵」でコラボ
「的矢かき」を生産している三重県志摩市の佐藤養殖場と「半蔵」の銘柄で知られる伊賀市の大田酒造がコラボし、ミネラル豊富なカキ殻をまいた田んぼで酒米をつくる事業に乗り出した。廃棄物を資源として有効活用し、循環型の農業を目指す取り組み。大田酒造が酒米を使って純米吟醸酒を醸造し、佐藤養殖場の直営レストランなどで提供する。 【写真】これは貴重…的矢かきの生みの親、佐藤忠勇
1925年創業の佐藤養殖場は、年間約100万個のカキを生産している。カキ殻の多くは、リサイクル業者に回収を依頼しているが、一部は廃棄物として処理してきた。
「来年の創業100年に向け、廃棄物を資源として有効活用し、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献したい」と、浜地大規社長(44)が、地元で酒米づくりをしている前田俊基さん(65)に連携を提案。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」とコラボすることで、「地域産業の活性化にもつなげたい」と考えたという。
今月11日には、志摩市阿児町鵜方にある前田さんの田んぼ約50アールに、粉末にしたカキ殻約600キロをまいてトラクターで耕した。年内に計約1ヘクタールの田んぼにカキ殻をすき込む予定だ。
来年4月には、県が開発した酒米「神の穂」の苗を田んぼに植える。カキ殻の主成分は炭酸カルシウムで、酸性に傾きがちな土壌を中和するほか、作物の成長に必要なミネラルの補給に役立つという。
大田酒造の半蔵は2016年の伊勢志摩サミットで乾杯酒に選ばれるなど、志摩市との関わりは深い。昨年からは、前田さんが生産した神の穂で醸した日本酒を「半蔵 志光」と名付けて販売しており、生原酒1000本は1か月で完売する人気ぶりだったという。
大田智洋副社長(57)は「カキ殻を活用した神の穂を使って日本酒を仕込むことで、どんな味わいになるのか楽しみ。伊賀と志摩をつなぎ、地域に貢献できる酒蔵であり続けたい」と話す。
浜地社長は「豊かな海をつくるためには、海につながる山や川、田んぼを含めた地域全体の環境保全や資源循環が大切だ。ミネラルたっぷりの田んぼで酒米をつくり、大田酒造の技術でカキ料理に合う日本酒を醸してもらいたい」と期待を示した。
カキ殻を活用した純米吟醸酒は来年12月に完成する予定で、佐藤養殖場の直営レストラン「的矢かきテラス」などで提供される。