アルケゴス問題で巨額損失の銀行、米司法省が刑事捜査を強化
(ブルームバーグ): 2021年に経営破綻した米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントを巡り、米司法省が多額の損失を被った銀行への捜査を強化している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。アルケゴス創業者のビル・フアン被告は7月に有罪評決を受けたばかり。
司法省の反トラスト局はアルケゴスが手がけた1500億ドル(21兆1700億円)余りの取引をどのように清算したのかを巡り、休眠状態にあった捜査を再開した。
関係者によると、同局のサンフランシスコ支部はフアン被告の裁判後に着手した新たな聴取で、銀行団が2021年3月に開催した緊急会議に焦点を絞っている。会議ではフアン被告のポートフォリオを秩序ある形で清算し、各行の損失を最小限に抑えるための提案が検討されたという。
こうしたやりとりの中で価格操作を目的とした共謀や共謀の企てがあった可能性を、司法省は調べている。クレディ・スイスと野村ホールディングス、UBSグループの少なくとも3行はアルケゴスへのエクスポージャーの一部を管理された方法で清算することに合意したと関係者は述べた。ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、ドイツ銀行といった他行もそのような合意を模索したものの、最終的には見送ったという。
聴取がどのくらいの期間を要するのか、最終的に訴追につながる可能性があるのか、その場合はどの銀行が対象かといった詳細は分かっていない。各行の広報担当者と司法省の報道官はコメントを控えた。関係者は部外秘の情報だとして匿名を条件に取材に応じた。
緊急事態に対処する目的で浮上した解決策を巡って、米当局がウォール街の銀行にシャーマン法を適用する可能性があることは、金融業界の幹部にとって不愉快な展開だろう。
134年前に制定された同法は、独占的企業への取り締まりと関連付けられることが多いが、第1条では取引制限の共謀を対象にしている。ライバル企業が集まって価格を高水準に維持することを話し合うというイメージは、反トラスト当局の懸念を招くかもしれない。