第一生命「初任給32万円」が話題だが…月収19万円、27歳・エリア採用の営業職員のおたけび「う、うそでしょ?」【CFPが解説】
第一生命HDの初任給が27万6,000円から32万1,000円に引き上げられ、国内大手金融機関では最高となったことが話題です(Bloomberg/2024年1月18日13:00)。人材の獲得競争が激化するなか、優秀な人材の確保や定着につなげることを目的に、給与水準を引き上げる企業は増えています。本記事では、事例とともに、現代における転職の考え方についてCFPの伊藤貴徳氏が解説します。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
産業別で最も高い賃金は「金融業、保険業」
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査のうち、産業別で最も高い賃金は「金融業、保険業」となっています。 その額は部長級で796万7,000円、課長級で621万5,000円。年収にすると、部長級はおよそ900万円、課長級はおよそ750万円となっています。会社規模によっても増減し、会社規模が大きくなればなるほど収入も上昇する傾向にあります。
離職が相次ぐ生命保険会社
Aさん(45歳・女性)は、大手生命保険会社で課長職として勤務していました。当時の年収は1,000万円で、月収ではおよそ60万円です。 もともとエリア職採用の営業現場職員からの叩き上げで、現場時代から社内でも信頼の厚かったAさん。大学卒業からおよそ20年間、この会社で勤務をしていました。 Aさんにとって給与水準は申し分ないのですが、大企業ならではの旧態依然とした雰囲気に違和感を覚え始めるようになりました。加えて耳にした『同業他社の第一生命HD 内勤職の初任給32万円に引き上げ』との報道。 「生命保険業界の若手の離職は大きな痛手です。特に営業の現場で奮闘していた子たちはどんどん辞めていってしまいます」 営業職員の入社3年以内の離職率は8割から9割ともいわれる生命保険会社。Aさんは現状を危惧します。 「このニュースを見て、営業時代の後輩と話したのですが、その子はいま27歳で、新卒から職域営業をしています。営業の募集手当を含めても成績によって波があるそうですが、月収19万円で都内では暮らすのは難しいと……。『う、うそでしょ? そもそも一番人が辞めているのは営業職員なのに内勤職だけなんて。うちの会社も今後上がるのかな? そうだとしてもまた内勤職だけなのかな。なんだかもうばからしい。辞めちゃおうかな!』と勇ましく叫んでいました」 「初任給引き上げということで今後に期待したいですが、その企業で働く理由や魅力が付いてこなければやはり人はついてこないでしょう。また、今回は初任給の改変のみでベテランの給料は変わらないようですので、もともといる社員のモチベーションが下がらないよう、バランスをとってほしいですね」 Aさんは、年功序列主義もいまだに強いことから、今後の昇進には時間がかかるかもしれないと考え、これからのキャリア形成を踏まえて転職サイトに登録しました。