大根仁が語る「地面師たち」と「演出家の仕事」 「50代以降は誰かのためになるような仕事をしたい」
ただこれは、作品に力があるのは前提としても、いまやNetflixが多くの人にとって手軽に観られるメディアになっている、というのが関係しているんだと思います。誰かにすすめられた時に、テレビドラマや映画を観るにはそれなりのステップが必要だけど、Netflixならスマホで帰りの電車の中でも観られるわけで。そういう視聴環境の要因は強く感じています。
――Netflixの普及がヒットの下地になっていると。
大根:「地面師たち」をきっかけに加入した人もけっこうな数いるでしょうから、そのへんはギャラとは別にボーナスという形でもらえるのかなって期待してますけど(笑)。あとは数字の話だと、映画だったら興行収入、テレビだったら今はもうだいぶあやしいとはいえ視聴率という明確な数字が出ますが、Netflixはよく分からないんですよ。日本のNetflix週間TOP10で何週間連続1位とか言われても、それがどういう数字なのか。
――メディアからの取材についても、映画なら公開前、ドラマなら放送前が定石ですが、配信ドラマだとタイミングに関係なく受けられますし。
大根:テレビドラマは放送が終わったらそれまでですし、映画でも公開後に話題になったから取材が増えるっていうのもほとんどないですからね。今回の場合、配信前よりも、配信後の方が3倍くらい多く取材を受けてますよ。「地面師たち」が数字を持っているのか、俺がペラペラ何でもしゃべると思われているのか分かりませんが(笑)。
あらゆる面で非常に人道的な制作現場
――Netflix作品ということでの最大の特異点は?
大根:表現の自由度が高い、というのは言わずもがなですが、制作の現場目線でいうと、一番は労働環境の真っ当さですかね。余裕のある制作期間が設けられた中で、1日の撮影時間もきっちり決まっていて、間に休みが必ずあって、あらゆる面で非常に人道的でした。僕自身、かつてはそういう時代だったとはいえ、鉄火場みたいな現場を散々渡り歩いてきて、タイトなスケジュールは当たり前、低予算こそ正義くらいに思っていた時期もありましたし、だからこそ生まれたような作品にも立ち会ってきましたけど、時間も予算もあるに越したことはないですからね。