【高校野球】指導者から見た新基準バット 小倉全由氏が語る現場で指導する上での留意事項
「ボールの芯と、バットの芯を結ぶ打撃が必要」
日本高野連は2月27日、「新基準金属製バット製造工場見学」を神奈川県横浜市内にある日本シャフト(株)横浜工場で実施した。 2年間の猶予期間を経て、2024年シーズン(センバツ大会、都道府県大会)から「新基準バット」に完全移行される。打球部は従来の3ミリから4ミリと肉厚になるため、トランポリン効果を抑制。また、最大径が64ミリと3ミリ細くなるため、木製バットに近い形状に。反発性能は5~9パーセント、打球初速は約3.6パーセント減少するという。 主催者の日本高野連から概要、協力団体として、製品安全協会、全日本バット工業会から詳細が説明された。そして、実際にバット製造過程を見学。小倉全由氏(日本高野連技術・振興委員、U18高校日本代表監督)は「指導者から見た新基準バットについて」と、現場で指導する上での留意事項を述べた。 まずは、教育者の視点で力説した。 「正直、現場では太さが変わった、重さが変わったという感覚だけなんですよ(苦笑)。ただ、今回の見学会を通じ、バットを作る大変さを目の当たりにしました。このような過程でバットが製造されていることを学んだ。グラブを大事にする姿勢は定着していますが、バットを大切にという思いが薄らいでいた。加盟校の金銭的な負担軽減を目的とした背景もありますので、もっとバットを大事に、指導者が伝えていく必要性を感じました」 従来の金属バットは2万5000円から3万円だったのに対して、新基準は3万~3万5000円と高額になっている。職人たちが丹精を込めて製造したバット1本1本には、魂がある。小倉監督は道具への愛着を訴えた。 次に具体的な「対応策」である。 「木製バットを基準としたスイングを、現場の指導者が教えていくのが一番だと思います。ボールの芯と、バットの芯を結ぶ打撃が必要です。旧基準では芯でとらえていなくても、オーバーフェンスしていた打球が、今後はアウトになる。どの時代も最後の1個のアウトを取るのは難しいこと。『打ち取った!!』と思った打球が、スタンドインすることはなくなるのではないかと見ています。現場からの声では『インコースを打つのに、ごまかしは利かない』と。投手としての技術を、対バッターにぶつけていく対決が期待できる」 3月18日に開幕するセンバツ出場校からは実際に、こんな意見が聞かれたという。 「木製バットのほうが、飛ぶのでは?」 小倉氏は「木を使うか、金属を使うか、あとは監督の判断」と前置きをした上で、自身の考えを述べている。 「木は一発で折れますので……。金属は一発で折れることはまず、ありませんから……。(日本高野連の基本理念でもある、加盟校の経済的な負担軽減という)金属バット導入の歴史をさかのぼっても、金属バットを高校野球が使っていくのは当たり前のこと。本当に力のある選手、うまい選手は遠心力、木製の粘りを使えるかもしれませんが、アベレージで見れば、金属のほうが打撃は楽です。木製バットに近い形状になっても、やはり、木製よりも金属のほうが楽であると思います」