「排除に加担してはいけない」。小説家と映画監督の有志ら、LGBTQ+への差別反対の声明
マジョリティの働きづらさにもつながっている
記者会見では、性的マイノリティであることを公表した上でエンターテインメント業界で活動する俳優らも発言した。 トランスジェンダー女性であることを公表している歌手で俳優の中村中(あたる)さんは、「作品の中でも、撮影現場でも、セクシュアルマイノリティを笑っても良い対象として扱っている」と感じた経験があったと明かした。だが台本や演出に違和感を抱いても、「現場の進行を止めてまでその違和感を口にするべきなんだろうかと考えると、口にできなかった」と振り返る。 「『作品作りに水を差すことになるんじゃないか』と気にして、苦痛を感じても我慢してしまう場合が私は多い。こうしたことが、セクシュアルマイノリティが仕事の現場で受ける差別の実態が見えてこない状況にもつながっているのでは」 また中村さんは、性的マイノリティへの差別やハラスメントのない現場は、マジョリティにとっても働きやすい環境だとも話した。信頼関係が育まれていない関係者から、セクシュアリティに関する質問をされたことがあった。その場にいた別の女性の俳優が、「今の話は聞いていてすごく嫌な気持ちになったよ」とフォローをしてくれた。後日、この女性が、介入した際に普段はしない伝え方をしなければいけなかったことが苦しかった、と打ち明けたという。 中村さんはこの経験から、「セクシュアルマイノリティに対する差別発言は、必ずしも当事者だけに仕事をしづらくさせるわけではない。現場で一緒にいるマジョリティにとっても、仕事がしづらくなることにつながっている」と感じたという。 同性愛者であることを公表している俳優の水越とものりさんは、オーディション用の履歴書でカミングアウトしていることを記すようにした途端、広告案件の書類審査に全く通らなくなったと語った。 「審査の過程は分からず、イメージに合わなかったと言われればそれまでですが、私自身は差別が背景にあるのではないかと感じてしまいました。日本でカミングアウトする俳優が少ないのも、こうした理由があると考えています」 さらに水越さんは、日本のドラマではLGBTQ+が描かれることがまだ少ないと指摘。「LGBTQ+がこの世の中に当たり前のように存在しているということを、ドラマを通じて示してほしい」と訴えた。
國﨑万智(@machiruda0702)