【西武投手王国への道】“元守護神”増田達至がチームのためになすべきこと「どこで投げさせてもらえるか分からないですけど、やることは一緒」
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 5年ぶりの優勝を狙う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=桜井ひとし 【選手データ】増田達至 プロフィール・通算成績・試合速報
開幕前に増田と会話を重ねた豊田コーチ
延長戦に突入すると、昨年6月15日の巨人戦から負け続けてプロ野球記録の15連敗――。 4月終了までの26試合で7度のサヨナラ負けを喫するなど、西武は歴史的な敗戦を重ね最下位に沈む(今季の成績は4月30日時点。以下同)。 最たる原因はリーグ最低のチーム打率.201の打線だ。投手陣はチーム防御率2.56と奮闘しているが、リードを奪えないまま試合終盤に突入し、ブルペン陣が堪(こら)え切れずに落とす星も増えている。 野球の競技特性上、1試合平均3点程度は失うものだ。その中で得点と失点の“収支”をどうプラスにしていくか。投手陣に限って言うと先発陣は6人のローテーションを上回る駒がそろい、配置転換を含めて中継ぎの層をどれだけ厚くして必勝パターンを築けるかにかかっている。 「今年の入りは甲斐野とアブレイユを8、9回に置いているだけで、俺は起用法を公言していない。いろんなパターンが組めると思っている」 豊田清投手コーチは4月12日のソフトバンク戦(ベルーナ)を前にそう話した。甲斐野央はこの日に2失点、19日の楽天戦(ベルーナ)で3失点すると24日、右肘の違和感で登録抹消された。 蓄積疲労も含めて選手個々の状態は蓋を開けてみなければ明確に分からず、構想と現実は一致しにくいものだ。人の調子は絶えず変化するため、選手個々で見れば実力の底上げが必要になる一方、管理者(投手コーチや監督)は層をできるだけ厚くしていくことが不可欠だ。 その意味で、今季の鍵を握る一人が“元守護神”の増田達至である。 「お前にはいろんなところで用意してもらう可能性がある。そこをしっかり受け止めてやってくれ」 開幕を迎えるにあたり、豊田コーチは増田と会話を重ねた。昨季までクローザーを務めた右腕に今季初の出番がやってきたのは3月31日の楽天戦(楽天モバイル)、3対3で迎えた6回だった。 「あそこでマスが流れを切ってくれたから、ということが今後も出てくる。それはすごく大事だと思う」 豊田コーチが言うように、9回を新加入のアルバート・アブレイユに譲った増田は同点や僅差のリードを許している試合中盤や終盤など、流れ的に1点も与えられないという場面で今季は起用されている。 「本当ならそういう場面を頼んではいけない存在だと思う。増田に聞いたら『俺の出番はここじゃない』と言うかもしれない。逆に『やっぱり俺はあそこ(9回)で投げる』という気持ちがないとこっちも困るし。あの景色を見ていたら、あそこで投げたいと思うのがクローザー。自分もそうだった。そういう気持ちが当然ありながら今の状況を受け入れてくれている。でも今年『9回増田』と決まっていた日もあるから」