【西武投手王国への道】“元守護神”増田達至がチームのためになすべきこと「どこで投げさせてもらえるか分からないですけど、やることは一緒」
「もう1回復活してほしいと思っている」
では、2016年から西武のクローザーを務めてきた増田は今季の起用法をどう受け止めているのか。 「自分の中ではそんなに変わらず、いつもどおりやっています。特にポジションがどこであろうが、自分がしっかりとチームに貢献するだけだと思っているので。こだわりと言うとおかしいですけど、そういうのは自分の中では全然(ない)と言うか」 任された場所で全力を尽くすだけ、という考え方の選手は多い。最大の目標=チームの勝利を目指す上で、選手は“駒”という位置づけだ。 一方で豊田コーチが言うように、競争社会でより良いポジションを勝ち取るという気概もプロ選手には不可欠になる。増田で言えばクローザーだ。そんな豊田コーチの思いはどう受け止めているのだろうか。 「監督、コーチの皆さんが『ここで行け』と言われるところでしっかり結果を出すだけだと思っているので。それが一番後ろなら、一番後ろでしっかり結果を出さないといけないですし。それが今のポジションでも一緒なので。どこで投げさせてもらえるか分からないですけど、本当にやることは一緒だと思っています」 入団12年目、36歳になった今季は7試合に登板して防御率3.00。4月16日のロッテ戦(ZOZOマリン)、同27日のソフトバンク戦(みずほPayPay)でともに延長戦で打たれて敗戦投手になった。 「僕もそうだけど、マスも年齢を重ねて体的な衰えもあるし。やっぱりモデルチェンジしていかないといけないと思って、マスには『こうしていこう』という話はしています」 4月10日のロッテ戦(ベルーナ)後、今季6年ぶりに西武に復帰した捕手・炭谷銀仁朗はそう話した。この日はストレートで押して1回を無失点に抑えたが、今季の増田はスライダーとフォークとのコンビネーションをうまく使おうとしている。 「マスは近年、ちょっと苦しんでいるしね。『全盛期』と言ったら失礼ですけど、バリバリのときに一緒に戦っていた仲間ですから特別な思いはあるんでね。もう1回復活してほしいなって思っています」 増田は力で押す投球を持ち味としてきた。炭谷の言葉をどう受け止めているのだろうか。 「ここ数年、自分の中で思うような結果も出ないときも多々あったので。いろんな人と話をしながら、その日、その日のいいボールをチョイスしながらやっていければと今のところ思っていますね。それが見る人によってはモデルチェンジとなってくるんじゃないですか」 一方、ブルペン担当のころから見てきた豊田コーチの考えはどうか。 「もともと持っている変化球の使い方や精度を上げていくしかないと思うし、そうやってくれている。今からパワーアップは難しいだろうし。長年やってきても、彼にとって初めての野球人生。年齢を重ねて苦しむのは当たり前。でも、それに耐え得る内面を持っている選手だと思う」 大前提として、増田は戦力として必要だから今も一軍のベンチにいる。その上で炭谷や豊田コーチが特別な思いを寄せるのは、彼が西武の投手陣を改善させる上で見本となってきたからだ。 『週刊ベースボール』2024年5月20日号(2024年5月8日発売)より
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