”クモ男”シジマールが語る「ゴールキーパー論」…「GKの『シュートストップの能力』より『足元の技術』を評価する流れはよくない」 いまはJリーグ首位を走るヴィッセル神戸のGKコーチ
「731分間連続無失点」記録
「みんなが“クモ男”なんて呼ぶもんだから、得点されてはいけないというプレッシャーがすごかった。絶対に止めないといけなかったからね(笑)」 【画像】「下着をつけずサッカー観戦」で欧州全体をお騒がせの「美女」 今季リーグ首位を走るヴィッセル神戸のGKコーチを務めるブラジル人のシジマール(・アントニオ・マルチンス)は、そう言って豪快に笑った。 かつて“クモ男”と呼ばれた彼のことを知る人は、今ではかなり少ないかもしれない。現在62歳。現役時代は1990年代に清水エスパルスのGKとして活躍し、初来日となった93年に当時では最長無失点の「731分間連続無失点」を達成。2021年にミッチェル・ランゲラックが823分で更新するまで、J1で破られることがなかった記録だ。 PKストップするときに両手を大きく広げる姿から“クモ男”と呼ばれ、多くのサッカー少年たちがそのポーズを真似した。 引退後から現在まで、プロからアマチュアまで様々なカテゴリーでGKコーチを務めてきたシジマールに「日本のGKの現状」について聞いた。
ヴィッセル神戸のGKコーチとしての2年間
――昨年、8年ぶりにヴィッセル神戸のGKコーチに就任しました。チームではどのような目標を掲げて指導をしていますか? 私が仕事をする上で大事なことはまず、いいチームにするために役に立たなければいけないということです。どのクラブにおいても、いいチームというのは、やはりGKのレベルが高い。これはレギュラーのGKだけではいけませんし、在籍するGK全員がハイレベルの状態でないといけない。そうでなければいいチームにはなれないと思います。 ――神戸には日本代表の前川黛也のほか、新井章太、高山汐生、オビ・パウエル・オビンナの4人のGKが所属していますが、指導において常に心掛けていることはありますか? 練習への取り組み、成長に向けての動機付けを意識させることです。なぜこれが必要なのか、自分はどうなりたいのか、君はなれる、できるとポジティブに声をかけて、士気を上げることです。私はそれを一番大事にしています。本当に単純に言うなら、ナイスキーパーとか、いいシュートブロックだったねとか、今の判断よかったよとか、そうした声かけ1つで選手の士気は上がっていきますし、そこがまず大事だと思います。 ――GKの気持ちを上げていく作業はとても大事なことなのですね。 GKは1番プレッシャーのかかる難しいポジションだと思います。“最後の砦”とよく言いますが、本当にその通りです。僕たちが抜かれてしまったら、もう誰もいないわけですからね。失点すればかなり叩かれ、責任も感じるポジションでもあります。だからこそ、彼らにはいつも顔を上げて、自信を持ってプレイしてほしいっていう気持ちから、そういう指導を心掛けるようにしているのです。 ――神戸はリーグ1位を走っていますが、そういう意味では全GKの意識の高さもチームの成績に影響しているのでしょうか? 当然、リーグ優勝という目標に向かって戦うなか、今季は(前川)黛也が1番試合に出て、代表にも呼ばれることで目立ってはいます。ただ、他のGK3人ともレベルの高いプロフェッショナルなので、チームの成績を支えているのは間違いないとは思います。