父の死後、会社を継いだ30代の社長が絶句、急に態度が豹変した、50代の「悪口取締役」のまさかの末路
労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が労務顧問として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。 【漫画】しすぎたらバカになるぞ…母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の壮絶 経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、従業員側のほうがむしろ強気に出られるような場面も見られるようになりました。 今回は、従業員が自社の社長の悪口を外部で言いふらしていたという事例について、その懲戒の是非も含めて匿名化してご紹介します。
辞めさせるにもそれなりのお金が必要
私はまず、O田さんの行為は「服務規律違反」に該当する可能性があることを指摘しました。 P社の就業規則には懲戒規定が整備されており、懲戒事由に「会社または会社に属する個人を中傷・誹謗し、その名誉・信用を毀損したとき」と規定があります。これにより、O田さんを懲戒することは可能ですが、会合で評価を下げる発言をしているからという理由ひとつで懲戒解雇が認められるかは、かなり難しいといえます。 解雇の有効性は「解雇濫用法理」と呼ばれるルールによって厳格に判断されます。そもそも、解雇には客観的に合理的な理由があること、その解雇が社会通念上相当であることの双方が必要です。その観点では、O田さんの言動がそもそも解雇に至るほどのものか、という懸念がありました。 まして懲戒解雇は制裁として課されるものであり、退職金の減額や再就職にあたって不利になるなど本人に大きな影響をあたえるものです。解雇の有効性を争われたら、N村さんが負けてしまう可能性はかなり高いと思われます。 私はそうN村さんに説明し、懲戒解雇が認められる可能性はこの一件だけでは難しいこと、どうしても辞めていただくことに固執するのであれば、まずは退職勧奨を検討することを最初にお勧めしました。 退職勧奨に当たっては一定の金銭を解決金として支払うことが一般的であること、O田さんは役員でもあり雇用保険の失業給付(求職者給付)の受給を受けることもできないため、一般的な解決金の額よりは高額になる可能性もさらにお伝えしました。 「僕のほうが被害者なのに、解決金を支払わないといけないんですか」N村さんはこういきどおります。 「いけないというわけではありませんが、解決金なしで退職勧奨を受け入れる人は稀だと思います。O田さんは年齢的にも再就職は難しいでしょうし、金額はそれなりの額を覚悟しておかれる必要がありそうです」 「納得できない」と言うN村さんに、私は次善の策として通常の懲戒方法である始末書の提出を求めることを提案しました。 O田さん側の言い分も聞いたうえで、自分がしていることは懲戒の対象になると自覚してもらい改善を促す狙いです。実際に改善されればそれが最良ですし、見込めなくても、会社として指導をした履歴を残すことができます。 始末書の効果に、N村さんは少し考えてから「そうします」と言って通信を切りました。