父の死後、会社を継いだ30代の社長が絶句、急に態度が豹変した、50代の「悪口取締役」のまさかの末路
社員との会話を増やした
また、P社のケースは部下から上司へのハラスメントの観点でも考えることができます。パワー・ハラスメント(パワハラ)の要件は「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。 優越的関係でいえば、N村さんの役職は代表取締役ですが、O田さんはN村さんを子どものときから知っており、年齢の差による知識量、業界での経験値などは大きくO田さんに分があります。 経営者団体は社外ではありますが、経営者同士の社交の場においてN村さんの人格を否定したり経営者としての資質を軽んじる発言は業務上必要ではなく、社会通念上も許容されないと考えてよいでしょう。 O田さんが社内で人望があったことも鑑みると、O田さんの対応へ同調し、N村さんが社長として仕事をするうえで非協力的になるなどの可能性があります。社内の風紀を守る意味でも、こうした状況は是正される必要があるでしょう。 現在のP社は紆余曲折を経つつ、N村さんの元で団結して事業に当たっています。N村さんとS原さんはこの一件を重く受け止め、社員との対話の機会を増やしました。 この過程において、既存の社員の中にはN村さんと先代の事業の進め方の違いに戸惑いがあったこと、しかし業界構造の変化などで変化させるに足る合理的な理由があることなどが徐々に伝わっていきました。定期的に面談しながらN村さんが社内の風向きを変えられている手ごたえを感じていることを知り、とても嬉しく思います。 P社のケースはO田さんの退職をもって決着しましたが、会社の秩序と敬意のある職場環境を維持するためには、経営者と社員が共に成長し合える環境づくりが不可欠ということが分かります。非常に印象深く、そして少し苦い経験として記憶している事件です。 …つづく村井真子さんの連載<父親の死後、会社を継いだ30代「建築会社の社長」が絶句した「50代の右腕社員」からの壮絶な裏切り>はこちらからどうぞ。
村井 真子(社会保険労務士・キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA))