藤子・F・不二雄の名言「ありそうもない話をありそうに描きたい」【本と名言365】
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。子どもたちがキャラクターに自分を重ね、一緒に泣いたり笑ったり、時には冒険物語を繰り広げる、藤子・F・不二雄の世界。物語を描く上でF先生が心に留めていたこととは。 【フォトギャラリーを見る】 ありそうもない話をありそうに描きたい。 ベレー帽をかぶりパイプを口にくわえた姿が印象的な藤子・F・不二雄。『ドラえもん』を始め、『キテレツ大百科』や『エスパー魔美』そして「SF短編」シリーズなど、誰もが知っている作品を数多く世に残した漫画家だ。 藤子・F・不二雄の漫画は、のび太がドラえもんと出会う、小学生の魔美が超能力を手に入れる、主人公のミツオがある日突然パーマンに任命されるなど、普段は平凡な小学生が道具や何かの力を手に入れたり、誰かと出会うことで非日常の体験をするという物語がベースにある。「日常性と非日常性のドッキング」だ。そうした話の最初の作品となるのが、「オバケのQ太郎」であった。 この言葉は、「オバケのQ太郎」の漫画の巻末に収められていた言葉。ふしぎな話が大好きなF先生は、自身の作品を振り返る。『千夜一夜物語』や『アラビアンナイト』などの物語に没頭した幼少期を送ったF先生は、自身が読んだ話を思い出しながら、「やはり、話という物は、現実からの飛躍が大きいほど面白いのです」と語る。しかし、時代が現代になると、昔のような悪魔や魔法使い、幽霊といった不思議な話は、そのままでは伝わらない。現実のニュースの方が刺激が強いからだ。 その上で、どうやったら「すこしふしぎ」な話が現代に伝わるか。考えたF先生は「日常と非日常のドッキング」を考え出したのだ。ごくごくありふれた家庭の日常に、非日常の象徴とも言えるオバケ(しかも最高にキュートな!)がやってきて、ドタバタ劇を繰り広げるという漫画が誕生し、大ヒットを飛ばしたのだ。 誰でもふしぎな話は聞きたい。ただしまるっきりの絵空事ではなく、それを身近な自分のまわりで起きたとしてもおかしくない現実感をもって聞きたい。ありそうもない話をありそうに聞きたい、ということだろうと思うのです。
ふじこ・えふ・ふじお
本名、藤本弘(ふじもと ひろし)。1933(S8)年12月1日、富山県高岡市生まれ。1951年、『天使の玉ちゃん』でデビュー。1954年、安孫子素雄とともに上京。「藤子不二雄」として活動開始。1987年にコンビを解消し、〝藤子・F・不二雄″として児童漫画の新時代を築く。主な代表作は『オバケのQ太郎(共著)』『ドラえもん』『パーマン』『SF短編』シリーズなど。
photo_Yuki Sonoyama text_Keiko Kamijo illustration_Yoshifumi ...