中国のEV成功、価格競争とテスラ要因が原動力-補助金にあらず
ブルームバーグ・エコノミクスの地経学担当シニアアナリスト、ジェラード・ディピッポ氏はEV分野で中国は特定の国内チャンピオンを生み出そうとはしていないと指摘。「中国は勝者を欲しがったが、それを選びたくはなかった」とし、これは多彩なEV企業を誕生させ、自由に競争させる「百花斉放(ひゃっかせいほう)」型のアプローチだと分析する。
こうした戦略によって、比亜迪(BYD)などEVメーカーは回転式タッチスクリーンを備えた電動ハッチバックをわずか7万3800元(約160万円)から提供。理想汽車の「Lシリーズ」は、広々とした車内と最上級の車載エンターテインメントで、電動スポーツタイプ多目的車(SUV)ランキングのトップに躍り出た。米アップルがEVプロジェクトを断念する一方、スマートフォンメーカーの小米(シャオミ)には、最近リリースしたEV「SU7」を買い求めるファンが並んでいる。
これらのEVメーカーの一部は、次のトヨタ自動車になる可能性さえある。BYDは23年に300万台余りを生産し、昨年10-12月(第4四半期)にはテスラを抜いて世界EV販売でトップになった。
EVの技術革新は、バッテリーやサプライチェーンの最適化など周辺分野にも波及している。
中国政府はEV産業がまだ発展途上だった時期に外国の電池メーカーを市場から事実上排除し、地場EVメーカーに供給できる電池会社の「ホワイトリスト」を設けたが、このリストは19年に廃止された。ソウルに拠点を置くSNEリサーチによると、BYDと寧徳時代新能源科技(CATL)の今年1-4月の世界EVバッテリー市場シェアは計53.1%に上る。
また、商務省の当局者は最近の記者会見で、上海近郊の長江デルタにあるEVメーカーは必要な全ての部品を4時間以内に調達できると胸を張っていた。
中国政府が不動産やインフラを原動力とした経済成長からの転換を図る中、EV業界は成果を出している。ブルームバーグ・エコノミクスの推計によれば、EV産業の寄与は26年までに国内総生産(GDP)の2.7%となる方向だ。これは20年の9倍に相当するが、中国の住宅バブル崩壊が残したギャップを埋めるにはなお不十分だ。