榊原郁恵さん「新婚時代はメールもSNSもなかったので、家庭内文通をしていました」|STORY
◇ 趣味も考え方も全く違っていた。だから惹かれあったのかも
―ところで、徹さんは、育児に協力的でしたか? 当時は「お父さんなんだから、もっとやってよ」と思うこともありました。でも、彼は、様子見をしていたんだと思います。というのも、結婚後、彼が勧めてくれて、私の母と同居していました。夫婦とも仕事が忙しかったので、母に頼ることが多く、孫育ては母の生きがいにもなっていたんです。彼は、人の気持ちをすごく敏感に感じ取る人でしたから、母から育児を取り上げないように気遣ってくれていたんですね。 また、彼自身、旅公演で全国を回り、帰ってくると連続ドラマ、というハードスケジュールが続き、疲れもたまっていました。なので、子どもが小さい頃、休日はじーっと将棋番組を観たり、読書をしたりして休んでいることもありました。 結婚観とか生活の仕方って、育った環境の影響が大きいですよね。私はサラリーマン家庭で、朝早く父は出かけて、夕方帰ってきたら正座して食卓を囲むみたいな暮らしでしたが、彼はお父さんが流しをしていたので、夜仕事に出かけ、朝はお父さんをゆっくり休ませてあげるために静かに過ごす。お弟子さんや大人に囲まれて、周りの空気を読める子に育ったのでしょう。私は、なんでもストレートに言うほうだけど、彼は、言葉の背景の意味まで考えるタイプ。朝夕の過ごし方も、考え方も趣味も全然違ったんです。 ―では、ケンカもありましたか? ケンカではないけれど、意見の食い違いはたびたびありました。答えを1つ出さなければならないときに、1つにどうしてもならない。そんなときは、納得いくまで意見を聞き、話し、中途半端に終わらせませんでした。結局1つにならなくて、2つ置いておくけどいいよね、となることもありました。「別れよう」なんて言葉が出ても、本気ではないのはお互いわかっていたし、乗り越えてきました。そうして、翌朝には、お互い「おはよう」と言って、普通の会話をする。それが生活ですよね。 同じ趣味の人がよかったと思ったこともありました。でも、私にないものを持っている人だから惹かれたともいえるんです。私は友達が多くないけれど、彼には友達がたくさんいて、スタッフも交えてワイワイ飲みに行ったりする。ときどき混ぜてもらうと、すごく居心地がいいんです。ああ、こういうところに私は憧れを感じたんだな、と気づくようになっていくんですよね。