榊原郁恵さん「新婚時代はメールもSNSもなかったので、家庭内文通をしていました」|STORY
◇ 2人の息子の子育てを 通じて“自分は何者なのか”を考えました
―ご結婚後の生活はどうでしたか? お互い忙しくて、すれ違いばかりで、結婚ってどういうことなのかと考えました。メールもSNSもない時代ですから、家庭内文通をしていました。長男が幼稚園に入ってからは、子どもの行事を中心に、私のスケジュールを調整してもらうようになりました。 息子を見ていると、自分を見ているようだと何度も感じました。私は人見知りで、仲間にすっとは入れないのですが、子どもも全く同じ。公園デビューでも、息子はお友達の様子を遠巻きに見ている。自分を見ているようで、イライラしたり、不安になったりしました。私が突破しなきゃ! と入っていくのですが、お母さん方とは交われなくて、二人で砂場の隅で遊ぶだけ。 そこで、幼稚園に入ってからは、「太鼓」や「読み聞かせ」、「コーラス」など、ママサークルに5つも入りました。サークルでは、お母さん方が、自分の得意なことを生かして、他のママたちや子どもたちのために活動していました。例えば、コーラスでは、ピアノの得意なママが伴奏を引き受けたり、お菓子作りの得意な方がお菓子をふるまったり、縫物が得意な人は小物を作ったり……。 ところが、では、いったい私に何ができるか、と考えてみると何にもないんです。「榊原郁恵」は、台本があるからしゃべれて、歌が用意されているから歌えて、演出家がいるから芝居ができる。けど、「渡辺郁恵」には何にもないと気づかされました。 あるとき、お母さん方と料理をしていると「あら、あなた意外とできないのね」とママ友に言われたんです。すると、なんだか急に気が楽になって。仕事では、料理番組に出ていて、料理が得意でなくてはならないし、主婦目線・母目線のコメントを求められれば、必死で応えました。でも、ここでは、何もない「渡辺郁恵」そのままを受け止めてもらえる。親としてゼロからをスタートしていけばいいんだと思えるようになりました。 幼稚園時代は、自分が何者かを考える、大切な時期でした。