SEKAI NO OWARI、心と体を補い合った“総力戦”7thアルバム 不調を抱えたFukase「無理に戦わなかった。そういう自分も肯定したい」
前作『scent of memory』から2年半ぶりとなるSEKAI NO OWARIの7thアルバム『Nautilus』が完成した。全12曲中、大型のタイアップが10曲に付帯していることからも明白なように彼らは1曲1曲、総力戦で「先方から提示されるお題」と「SEKAI NO OWARIとして描くべきサウンドやメロディ、リリック」と向き合い、ミッションをクリアしてきた。念願のドームツアーの成功や「Habit」が巻き起こした巨大なバズなどを経て、SEKAI NO OWARIのポップミュージックでありエンターテイメントはまたさらに強固な求心力と推進力を獲得していることを、この『Nautilus』というアルバムは証明している。 (インタビュー&テキスト=三宅正一) 【写真】全3形態ジャケット&内容紹介 ──ニューアルバム『Nautilus』の全12曲は、大型のタイアップと向き合った楽曲が数多く並んでいると同時に、SEKAI NO OWARIが持つ音楽的な振れ幅と高いポピュラリティ、そしてどのような様相の時代にも呼応するメッセージ性の強さがあらためて浮き彫りになっているアルバムだと思います。 DJ LOVE「僕自身、アルバムの曲を聴くと前作からの2年半の日々を思い出すような感触があります。タイアップ曲として聴いてもらう機会が多かった分、リスナーにとってもそういうアルバムになったのかなと思うんですよね」 Saori「今回はすごくタイアップが多いんですよね」 ──そうですね。全12曲中、10曲に大型のタイアップが付いています。 Saori「いろんなタイアップのオファーをいただいて、自分たちはそれにどう応えられるのかを締め切りに追われながらひたすら繰り返していたら、アルバムができたみたいな(笑)。でも、これだけ多種多様なタイアップをオファーしてもらえたのはすごく幸せなことでもあるし、タイアップによって曲を作るきっかけをもらったし、学びの2年半でもありました。その集大成としてのアルバムでもあるのかなと思いますね」 ──どんなことを学びましたか? Saori「タイアップ先とSEKAI NO OWARIとしてできること、その重なる部分を探すのはすごく難しいことでもあって。でも、Fukaseくんは『それ、重なってるのかな?』と思うくらい攻めたバランスで歌詞を書いてくるんですよ。たとえば「Habit」だったら『聴く人の背中を押す曲を』というリクエストがあったのに、あんなに攻めた歌詞を書くんだみたいな。『背中を押してるかもしれないけど、その下にあるのは崖じゃない?』って(笑)」 一同「(笑)」 Saori「歌詞はFukaseくんの次に私が多く書かせてもらっているので、自分がこれだけタイアップ曲の歌詞を書いてみると、すごく学びがありましたね。『私はそんなに性格悪くなれない』みたいな(笑)。私が『背中を押してください』って言われたら、『背中を押すってなんだろう?』って必死に考えちゃうんですけど、Fukaseくんはもしかしたら相手の要望とか聞いてないんじゃないかと思うくらい」 Fukase「ちゃんと聞いてますよ」 Saori「(笑)。その絶妙に外してくるやり方がすごくいいなって。それを自分なりに実践しながら、SEKAI NO OWARIの曲としてタイアップとどう向き合うかという方法を模索した2年半でもありましたね」 ──Nakajinはどうですか? 『Nautilus』というアルバムが完成した今の率直な手応えは。 Nakajin「マスタリングがニューヨークから上がってきたのが2月の頭で。いつもはすぐに聴くんですけど、今回はなかなかすぐに聴けなかったんです。正直、ちょっと怖かったというか。Saoriちゃんが言っていたようにタイアップが多かったというのもあったし、僕自身体調が悪い時期もけっこうあったので、1曲1曲にいろんな苦労をしたし、先方のリクエストにどう対応するか試行錯誤したので。それもあって、聴くのが怖かった部分もあったんですけど、いざ聴いてみたら1曲1曲にちゃんと個性があるし、尖ったアイデアも入っていて、いいアルバムになったなと思えたので安心しました。『ああ、こんなこともやってたわ。やるじゃん!』って自分でも思えるというか。聴きながら安心したり、『このときめっちゃつらかったわ、泣きそう!』ってなったり(笑)」 ──では、Fukaseくんはどうでしょう? Fukase「音楽って、ずっと続けていると人の期待に応えたくなくなってくるんですよ。『それ過去の曲でもうやったから、いいよ』って多くの人が求めてることに対してアゲインストしたい気持ちが出てくる。でも、それってやっぱりよくないんですよね。料理とかもそうだと思うんですけど、人が美味しいと感じるものってある程度は決まっていて。それに応えることで受け手を満足させられると思うんですね。もちろん、誰も食べたことがないようなものを提供することもエンターテイメントではあると思うんですけど、珍味ばっかり出てきても受け手を満足させられない。そういう部分でタイアップは毎回僕らの頬を叩いてくれるというか。『まずはリスナーを満足させろよ』と。『そのうえで工夫していけ』と。『おまえらはポップスをやるんだろ? J-POPをやるって決めてるんだから、ひねくれずに真正面から向き合え』って頬を叩いてもらえるんです。「Habit」みたいにポップスとしての安心感のない曲もあるけど(笑)、やっぱりちゃんと安心感があって、自分たちの音楽があって、俺の歌声があって、みんなで書くメロディや歌詞があって、リスナーが初めてSEKAI NO OWARIに触れたときに好きだと思ってもらえた状態をキープしながら変化していくのがベストなのかなって。そうやってタイアップがあることで、やじろべえのような、絶妙なバランスでいられるんですよね」 ──裏を返せば、タイアップがなかったらすごくアゲインストなアルバムが生まれると思いますか? Fukase「そうなると思いますよ。ほぼラップ曲になると思います(笑)」 一同「(笑)」 Fukase「それでツアーに出て、お客さんの顔を見て『あ! やらかした!』って思うはず(笑)」