60代半ばで都心から郊外へ 「美学ある」団地暮らし 人生のアップダウンを経てたどり着いた「部屋」
いろいろなことがありましたが、過去の失敗経験が、中小企業診断士としての仕事に役立っています」 日本のバブル期はビジネスチャンスに満ちた時代だった。その経験によって得たノウハウは、不況によって経験値を上げる機会が得がたい現代において、貴重な資産でもあるだろう。 「そうかもしれません。でもチャンスは探せばどんな時代にもあると思っていますし、後輩やアドバイスする人たちにもそう伝えています。 私自身も70歳になったら、また別のことにチャレンジしたいんです。手先を使う仕事をしたいので、1年間織物の学校に通うつもりです」
重松さんの話し方はテンポが速く明晰(めいせき)だ。「新しい挑戦をしていると、未来への不安なんて感じる暇がない」とのこと。明確な目標を持ち、年齢を重ねても進むべき道を確実に歩んでいることが、その語り口にも滲み出ている。 ■自分らしさが映える、白い部屋 68歳になっても仕事に旅にとアクティブに活動する重松さん。自宅で寛ぐときにどのような過ごし方をしているのだろう。 「料理を作ったり裁縫をしたりしているときが、一番楽しいですね。手仕事をするのが好きなんです。
昔から定期的に人を招く『ご飯会』をしていて、料理をふるまうのが楽しみ。裁縫に関しては特に機織りに凝ってます。仕事でもテキスタイルのバイイングなどをしているので、さらにその分野の技術や知見を深めたいと思っています。 この家はリビングに広さがあるのが私向き。食事にゲストを数人呼んでも余裕があります。ひとりのときはこの場所で布を裁断したり、ミシンを使ったりも。広い部屋がひとつあることで、暮らしに幅を持たせることができます」
重松さんと話していると、非常に社交的な人だという印象を受ける。今後ひとりではなく、誰かと暮らしたいという気持ちにはならないのだろうか。 「暮らすのはひとりがいいですね。結婚も、もうしたくない。ひとり暮らしなら家にいる間は全部自分の時間で、自分の空間でしょう? 誰かの食事を用意するために作業を中断する必要もないし、自分のテイストと違うアイテムが生活に混入してくることもない。そんな暮らしに満足しているんです」