ひょっとして私は「睡眠障害」? 症状別の原因と対策を専門医が解説!
日々、当たり前のように行なっている「睡眠」。実は、私たちが健康に過ごすうえで欠かせない重要な役割を担っています。その仕組みや役割はもちろん、睡眠不足のデメリットから“質のいい眠り”を手に入れるためのアドバイスまで、医学博士の西野精治先生に教えていただきました。今回は、「睡眠障害」について。 【写真】睡眠をサポートするアイテムまとめ
Q.「睡眠障害」の原因と症状を教えてください! A. 睡眠障害=睡眠の異常から生活に支障のある状態です 睡眠障害とは、睡眠の異常から生活に支障のある状態を総称する言葉です。症状や病態はいろいろありますが、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)では大きく次の7つに分けられます。 ①不眠症:寝つきが悪い、ぐっすり眠れないなど ②中枢性過眠症群:ナルコレプシーなどの過眠症 ③睡眠関連呼吸障害群(睡眠時無呼吸症候群など):睡眠中に何度も呼吸停止が起こって覚醒反応が生じる ④概日リズム睡眠・覚醒障害:適切な時間に寝たり、起きたりできない ⑤睡眠時随伴症群:夢遊病など睡眠中に異常行動を示す ⑥睡眠関連運動障害群:脚がむずむずしたり、ほてったりして よく眠れない ⑦その他の睡眠障害:睡眠にともなう頭痛やてんかんなど 一般に睡眠障害というと、寝つきが悪い(入眠障害)、夜中に何度も目を覚ます(中途覚醒)、早く目が覚める(早期覚醒)、熟睡した感じがしないなど、眠れない状態を想像しがちですが、これらはすべて①の不眠症の症状で、本人が自覚できるケースが大半です。 一方、日中強い眠気に襲われ、起きていられなくなってしまう②の過眠症も、不眠症と同じくらいよくみられます。過眠の症状でもっとも多くみられるのは、③の睡眠時無呼吸症候群による2次的な過眠です。就寝中にたびたび呼吸停止が起こって目が覚めるため熟睡できず、日中の眠気が発生します。 適切な時間に起床、就寝ができなくなる④の概日リズム睡眠・覚醒障害は、体内の睡眠・覚醒リズム(体内時計)が地球の明暗(昼夜)サイクルと一致していないときに起こる睡眠障害です。この障害は自発的にも、外的要因によっても起こります。 たとえば、日勤と夜勤を交互に務めるシフト勤務の場合、仕事に応じて眠る時間帯を変えなければなりません。体内時計は通常、朝の光でリセットされますが、仕事のシフト変更や不規則な生活が続くと正されにくくなります。すると体内時計のリズムがくずれ、日中の能率低下や体調不良が起こります。 ⑤の睡眠時随伴症候群は、睡眠中に体が勝手に動いてしまうなどの症状が起こる睡眠障害です。ノンレム睡眠中に起こる夢遊病、夜驚症などがあります。夜尿、歯ぎしり、悪夢も睡眠時随伴症群に含まれます。その多くは子どもによくみられ、成長すると改善することの多い睡眠障害です。 ⑥の睡眠関連運動障害群は、就寝中脚がむずむずするなどの不快感で眠れなくなる「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」などがあります。いずれも症状や不調が続く場合は専門医に相談することをおすすめします。 ■「睡眠時無呼吸症候群」は21世紀の現代病 睡眠障害のなかでも近年特に増えているのが、21世紀の現代病ともいわれる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。眠っている間にしばしば呼吸が止まってしまう病気で、③の睡眠関連呼吸障害群に分類されます。 睡眠中は、気道や舌のまわりの筋肉が弛緩して脱力します。このとき、脱力した舌がのどに落ち込んで気道をふさぐようなことがあると、無呼吸になり苦しくなるのです。さらに、無呼吸が起こるたびに足りない酸素を取りこもうとして覚醒を繰り返し、慢性的な睡眠不足状態におちいります。その結果、日中の眠気が強まり、判断力や集中力が下がるなど、生活に影響をおよぼすのです。 肥満で気道の軟部組織が肥厚すると症状が出やすくなり、睡眠時無呼吸症候群を長くわずらうと、高血圧や糖尿病など生活習慣病を併発し、悪化すると脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる病気の発症リスクも高くなります。治療せずにいると、およそ8年間で約4割の人が死亡するという衝撃的なデータもあるほどです。 この病気の人は大きないびきをかくことが多く、家族など一緒に寝ている人から指摘されて初めて気づくことが少なくありません。また、太った男性に多い病気のイメージがありますが、痩せていても、女性でもかかる病気です。加齢も危険因子になりますが、最近は若い人の診断例が増えています。自分では気づきにくいので、日中の眠気や倦怠感など気になる症状がある場合には、医師の診断を仰ぐことをおすすめします。 ■3つ以上当てはまったら要注意。睡眠時無呼吸症候群によくある状態 【起きているとき】 □寝ているはずなのに強い眠気がある □だるさ、倦怠感がある □集中力が続かない □いつも疲労感がある □朝起きたときに疲れがとれていない □20歳のときより10kg以上太った 【寝ている間】 □いつも、いびきをかく □いびきがよく止まる □呼吸が止まることがある □息苦しさを感じて起きる □何度も目が覚める □寝汗をかく □何度も尿意で目が覚める 医学博士 西野精治 スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長。日本睡眠学会専門医。ブレインスリープの創業者兼最高研究顧問。著書に『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』(日本文芸社)など。 構成・取材・文/国分美由紀 出典/『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』(日本文芸社)