パラ五輪メダリスト…全盲柔道家・半谷静香が畳に上がる理由「ルールで守られている柔道はよっぽど安全」
小川「金メダルを目指している時にはメダルは取れない」
続けて半谷が「よっぽど、電車とか駅とかホームとかクルマに轢(ひ)かれそうになるとか線路に落ちる方が、私たちにとっては全然危ないこと。だけど、ルールで守られている柔道は、よっぽど安全です」と話したが、非常に考えさせられる驚きの言葉だった。 小川からすれば、教え子が殊勲を挙げて戻ってきたのだから喜ばしいのは当然だが、「嬉しいですね、当時を思い出してくれるっていうのはね」と語り、改めて言葉に出されると、半谷としても嬉しくないはずがない。 実際、この言葉を受けて半谷は、「当時、ロンドン五輪を目指している時に小川先生から言われた、『金メダルを目指している時にはメダルは取れない。圧倒的な優勝を目指さなければメダルは取れない』って言う言葉が励みになっていた」と語りつつ、「今回は決勝戦で負けちゃったんですけど、全力は出し切っての銀メダルなので、納得の銀メダルだなと思っています」と話した。 各々の状況にもよるが、接することがない人にとっては、半谷のような全盲の柔道家に接する機会はほとんどない。その点で言えば、その場にいた小川道場の関係者は、五輪以上にパラリンピックの存在が近くなったに違いない。 ちなみに、通常の柔道とのルールの違いについて半谷は、「組んでからの組み手がない。それだけの違い」と話していたが、頂点を目指して研鑽を重ねる、という意味ではどんなジャンルにも変わりがない。 とはいえ、半谷は「(目が)見えない選手にどう関わっていいのか、手を差しのべにくいかなと思うんですけど、こうやって身近なところでブラインドの選手がいるって思うと、関わりやすくなったり身近に思えたりすると思うので、パラリンピックの視覚障害者柔道の普及も同時に発展していけたらいいなと思っております」と話し理解を求めた。 また、半谷は今回のパリパラを振り返り、「現地で帯状疱疹が出たりいろいろあったんですけど」と話していたが、それでも「今回はたくさんの人にサポートしてもらっていて。JSC(国立科学センター)のサポートを受けていたりとか、強化チームに万全のサポートをしてもらったり。あとは今のコーチが現地に来てくれたり。いつも通りのコンディショニングができたのがベストパフォーマンスで臨めた要因だと思っています」と、4大会目の出場にして、銀メダルが獲得できた理由を明かした。 最後に小川が「頑張ってほしい。これからまだやるんでしょ?」と訊ねると、「(2028年の)ロス(パラリンピック)を目指して頑張ります」と答えながら、「今、36歳なので、次のパラは40歳なんですけど、カラダが持てば……はい」とニコリ。メダルを獲得してもさらに挑戦をあきらめない半谷の姿勢は、銀メダルを獲得した、という“過去”ではなく、すでに“未来”を見据えている。
“Show”大谷泰顕