名門・三井住友建設が赤字転落を発表…経営混乱で広がるメインバンクとの距離感(小林佳樹)
【経済ニュースの核心】 名門ゼネコンのひとつ、三井住友建設が苦境に喘いでいる。三井住友建設は12日、2025年3月期の連結業績予想を下方修正し、最終利益が80億円の赤字になる見通しだと発表した。 麻布台ヒルズが華々しくオープンしたのに…森ビルの財務は窮地の謎解き 現在施工中の国内大型建築工事の遅れで131億円の追加損失を計上したことが主因で、24年3月期に40億円の黒字に転じたのもつかの間、再び赤字に転落する格好だ。また、アクティビスト(物言う株主)として知られる旧村上ファンド系の南青山不動産が、共同保有者と合わせて三井住友建設株の保有比率を18.27%まで引き上げたことが15日提出の大量保有報告書で明らかになった。まさに風雲急を告げる事態だ。 赤字転落の元凶となる大型工事の物件名について三井住友建設は明示していないものの、「東京・麻布台ヒルズのタワーマンション(地上64階・高さ260メートル)とみられています。今回の追加損失を含め、累計で757億円の損失が発生している」(大手信用情報機関)という。業績予想修正では、25年8月の竣工を想定しており、今回の見直しで「完成までのコストはおおむね確定した」と会社は説明しているが……。 麻布台ヒルズのタワーマンションは19年に着工した。地下工事の工法変更や資材の不具合が相次ぎ、資材高騰もあり建設費が膨らんだ。当初は23年3月の完成予定だったが、1年8カ月が経過した今も建設途上だ。 ■クーデター勃発 赤字転落とともに経営も混乱に陥った。今年2月には、三井住友銀行出身の近藤重敏社長の辞任を求める“クーデター”が勃発。社長派と反社長派に分かれての暗闘が繰り返された末、近藤氏と君島章兒会長が、混乱の責任をとって退任する事態となった。 三井住友建設が昨年5月に、赤字の元凶となっている麻布台ヒルズの工事について、外部の有識者も交えた調査委員会を立ち上げ、9月に調査報告書を取りまとめた。調査報告書では、難度の高い大深度の地下工事で工法変更が発生したことが原因と分析しているが、問題の根はガバナンスそのものにあるとの見方が強い。 「三井住友銀行出身の近藤氏が解任され、メインバンクの三井住友銀行が三井住友建設を見る目も変わってきている。一時は銀行主導で他のゼネコンとの統合を模索したが、現在では距離を置いているようだ」(メガバンク幹部)という。 三井住友銀行の福留朗裕頭取は、近藤氏が名古屋の法人営業本部時代の上司であり、その関係もあり、トヨタ自動車が建設を進めている静岡県の「ウーブン・シティ」も請け負っている。 三井住友建設は、住友グループの「白水会」、三井グループの「二木会」の両方に名前を連ねる名門。このまま赤字を垂れ流し続けることは許されない。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)