『団地のふたり』ヒットの理由は「共感」と「リアリティ」。主人公2人が55歳、築58年の団地の懐かしさ
◆大切なものとは何か この作品の一番のテーマはなんだったのだろう。それは第8回から最終回まで描かれる夕日野団地の建て替え計画の中にあるはずだ。 夕日野団地は新築だった1960年代には羨望の的だったが、今や至るところ傷だらけ。エレベーターもなく、不便だ。このため、マンションへの建て替えが決まった。 佐久間はマンションには移らず、千葉に住む息子の家に転居することになった。悪い話ではないはずだが、佐久間は団地への未練が強く、涙ぐみながら、こう漏らす。 「私、好きだったのよね(この団地が)。だって、いろんな思い出があるもの」 家族や近隣住民との楽しい日々である。この作品は団地という住居形態を讃えているわけではなく、どこに住もうが幸せになるためには家族や隣人たちとの良好な関係が大切であると静かに訴えている。また、近所付き合いを厄介なものと考える風潮が強まるばかりだが、それに疑問を投げかけているのだろう。 ノエチとなっちゃんの場合、大切なものに幼なじみとの結びつきが加わるのは言うまでもない。 文◎放送コラムニスト 高堀冬彦
高堀冬彦