<城氏が語る>ハリルJの東アジア杯での収穫はゼロ
東アジア杯の最終戦の中国戦は、1-1のドローで終わった。ハリルジャパンは、初戦の北朝鮮に敗れ、韓国、中国に引き分けて屈辱の最下位である。ハリルホジッチ監督は、Jリーグメンバーで参加した今大会のテーマのひとつに「メンバーの選考」というものを挙げていたが、そういう意味では、誰一人としてA代表のレギュラーに食い込んできそうな新戦力は見当たらなかった。厳しい言い方をすれば、収穫はゼロだ。 フィジカルの準備不足を敗因として述べていたが、それも言い訳にしか聞こえない。 ハリルホジッチ監督は、高い位置からプレスをかけ、中盤でボールを奪い、そこから縦に、少ないタッチ数でスピードある攻撃を仕掛けるというコンセプトをチームに植えつけようとしてきた。今大会ではその「縦一辺倒」の戦術に問題がありーという批判も出ているが、私はそうは思わない。アギーレ監督の解任後に、途中から監督に就任、短い時間で自分の考え方をチームに落とし込むには、これくらいハッキリとしたコンセプトがなければ難しい。おそらく時間があれば、もっといろんな戦術のパターンをハリルホジッチ監督も使いたかったのだろうが、限られた時間の中では、メリハリをつけた指示しかできなかったのではなかったか。 それは間違っていない。むしろハリルホジッチ監督に言われたことだけを忠実に守ろうとして、状況に応じて、自分たちで考え、戦術、戦略をピッチの中で変えていくという対応力に乏しかった選手側に問題があったと見ている。 中国のディフェンスは“ザル”だった。ディフェンスラインはバラバラで、組織だった連携力もなかった。そういうディフェンスを崩して勝ち越し点を奪うことは、そう難しくなかったはずだが、選手からの「ここで出せ!」「ここへ出せ!」「このタイミングで!」という強い要求や、ピッチ上でのコミュンミケーションが見られなかった。頭で考える判断力というものに欠けていた。それゆえ、相手のウイークポイントを突く、攻撃の多彩さや工夫につながらなかった。 今回抜擢された選手は、A代表入りをアピールするために「ミスをしたくない」、「監督の求めるプレーを」の気持ちが強すぎて、チャレンジできなかったのかもしれないが、それは逆だ。Jリーグのクラブでは、コンセンサスは浸透していて、それぞれの選手のプレーや特徴も熟知しているため、コミュニケーションも自然に取れるが、代表チームはまるっきり違う。集まるのも短期間で、メンバーはガラっと変わる。そうなると、チームに合わせる対応力が問われる。個々の能力を最大限に引き出しながら、チームコンセプトを守り、状況に応じたサッカーを『頭を使いながら』行っていくという力が必要になるのだが、東アジア杯に、召集された新しいメンバーには、その考える力に欠けていた。 海外組は、コミュニケーション力が高く、チームでも、常に要求しなければ生き残れないという厳しいピッチの中でプレーしてきているので、代表チームに入っても、そういう要求やコミュニケーションが当たり前にできる。そこが国内組と海外組の大きな差でもあるが、まだまだ両者の間にある溝は埋まらないと感じた。